こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)トランプ関税に関するニュースが世界を騒がせていますが、そういった施策の背景にあるアメリカの貿易収支について、本記事ではデータをベースに明らかにしていきたいと思います。
アメリカの20年間の貿易収支推移
2024年の貿易統計によれば、アメリカの輸出金額はおよそ2.1兆ドル(約290兆円 1ドル=140円換算)、輸入金額はおよそ3.35兆ドル(約470兆円)、差分となる貿易収支はおよそ-1.3兆ドル(約-180兆円)となっています。
グラフを見ると、貿易収支を示す赤の折れ線グラフは20年間貿易赤字の状態を示しており、少しずつ赤字幅も大きくなっていることが分かります。特にコロナ禍以後は輸出に対して輸入金額の伸びが大きくなっており、収支は悪化の傾向にあります。
対比としてサービス収支を見てみましょう。統計データの関係でこちらは2023年のデータを参照します。
アメリカのサービス輸出金額はおよそ1兆ドル(約140兆円 1ドル=140円換算)、サービス輸入金額はおよそ7,200億ドル(約100兆円)、差分となるサービス収支はおよそ+2,800億ドル(約+40兆円)となっています。
しばしば貿易赤字をサービス黒字でカバーしている論調も見られますが、金額規模としては貿易赤字がサービス黒字よりも4倍以上大きくなっているため、第一次所得収支や第二次所得収支も加えた経常収支を見ても、アメリカは赤字が拡大している傾向にあります。
アメリカの国別貿易赤字ランキング
ここからは国別の貿易赤字ランキングを確認していきます。1位~5位の国々は以下です。
国別貿易赤字1位:中国 3,191億ドル
国別赤字の1位は中国でおよそ3,191億ドル(約45兆円)の赤字です。アメリカにおける中国からの輸入金額は約4,600億ドルとなっており、これは中国総輸出金額の13%、アメリカ総輸入金額の14%程度にあたります。
付加価値の高い電気機器や機械類が金額の上位を占めつつ、玩具や衣類、履物といった軽工業品目も安価な労働力を背景に市場を獲得しています。特に第85類電気機器は米国輸入金額の約25%を、95類玩具は米国の輸入金額の約75%を中国からの輸出に依存しています。
国別貿易赤字2位:メキシコ 1,760億ドル
国別赤字の2位はメキシコでおよそ1,760億ドル(約25兆円)の赤字です。アメリカにおけるメキシコからの輸入金額は約5,100億ドルとなっており、これはメキシコ総輸出金額の86%(2023年比)、アメリカ総輸入金額の15%程度にあたります。
メキシコの輸出は大半がアメリカ向けということになります。主に第87類の自動車関連や第84類機械類、第85類電気機器といった工業製品がその構成となっており、これまでメキシコはアメリカのための製品工場であり供給元という位置付けでした。
国別貿易赤字3位:ベトナム 1,294億ドル
国別赤字の3位はベトナムでおよそ1,294億ドル(約18兆円)の赤字です。アメリカにおけるベトナムからの輸入金額は約1,400億ドルとなっており、これはベトナム総輸出金額の40%(2023年比)、アメリカ総輸入金額の4%程度にあたります。
金額としては第85類電気機器や第84類機械類が多くを占めていますが、第94類の家具や第64類履物、第61~62類の衣類と軽工業製品の一大供給元がベトナムとなっていました。
国別貿易赤字4位:ドイツ 879億ドル
国別赤字の4位はドイツでおよそ879億ドル(約12兆円)の赤字です。アメリカにおけるドイツからの輸入金額は約1,600億ドルとなっており、これはドイツ総輸出金額の10%、アメリカ総輸入金額の5%程度にあたります。
ドイツも基本的には第87類自動車関連製品を中心とした工業輸出が中心で、加えて第30類医療用品がアメリカへの輸出比率として大きくなっています。
国別貿易赤字5位:アイルランド 872億ドル
国別赤字の5位はアイルランドでおよそ872億ドル(約12兆円)の赤字です。アメリカにおけるアイルランドからの輸入金額は約1,000億ドルとなっており、これはアイルランド総輸出金額の43%、アメリカ総輸入金額の3%程度にあたります。
アイルランドは第30類医療用品が500億ドル以上アメリカに輸出されており、アイルランドの医療用品輸出金額の実に50%以上がアメリカ向けとなっています。アメリカの輸入金額の観点から見ても約25%がアイルランドからの輸入です。
トップ5ではありませんが、隣国のカナダと日本も見てみましょう。
参考)国別貿易赤字7位:カナダ 737億ドル
隣国であるカナダは7位でおよそ737億ドル(約10兆円)の赤字です。アメリカにおけるカナダからの輸入金額は約4,200億ドルとなっており、これはカナダ総輸出金額の74%、アメリカ総輸入金額の13%程度にあたります。
メキシコと比較すると工業製品のアメリカへの輸出はやや小さく、代わりに第27類鉱物製燃料の輸出金額が多くなっています。それ以外にも第44類木材の輸出金額が大きいのも特徴です。カナダもメキシコ同様にその輸出の多くがアメリカ向けとなっています。
参考)国別貿易赤字8位:日本 723億ドル
日本は8位でおよそ723億ドル(約10兆円)の赤字です。アメリカにおける日本からの輸入金額は約1,500億ドルとなっており、これは日本総輸出金額の21%、アメリカ総輸入金額の5%程度にあたります。
日本からアメリカへの第87類自動車関連製品の輸出はおよそ500億ドルあり、日本の自動車関連総輸出金額の3分の1がアメリカ向けです。それ以外にも第30類医療用品や第88類航空関連製品もその大半がアメリカ向けの輸出となっています。
アメリカにおける貿易赤字国の俯瞰図

アメリカの国別貿易赤字金額の構造を俯瞰して見てみましょう。赤字のおよそ50%がアジア・太平洋の国々からの赤字となっており、特に中国・ベトナム・台湾・日本・韓国との赤字が大きいです。輸送の観点から言ってもアジアー北米航路は流通量も多く長距離で運賃も高いため、これまでドル箱路線と言われていました。
次いで25%程度がヨーロッパの国々であり、ドイツ・アイルランド・イタリア・スイスとの赤字が大きくなっています。工業製品や医療用品といった付加価値の高い製品の輸入が赤字を押し上げています。
残りの25%の構造がその他の国々ですが、特にメキシコ・カナダ・インドが大半を占めています。中東やアフリカとの貿易比率はかなり小さくなっています。