こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は穀物産業の国際貿易データから輸出入の傾向を解説します。この記事をご覧いただくことにより、穀物産業の国際的な動向の変化を知ることができます。

穀物産業における傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。

  • 世界の穀物に関わる製品[第10類:穀物]の貿易取引金額(輸入金額)は、2004年のおよそ5.6兆円から、2023年ではおよそ25.0兆円と20年間で4.48倍に成長しています。
  • 2023年で輸出金額の最も大きい国はアメリカでおよそ3.3兆円です。その後ブラジル、オーストラリアが続いています。
  • 2023年で輸入金額の最も大きい国は中国でおよそ2.9兆円です。その後メキシコ、日本が続いています。
第10類 穀物の国際貿易統計概要
第10類 穀物の国際貿易統計概要

※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。

※世界の貿易金額の参考地として「輸入金額」をベンチマークしています。これは国内に到着した商品の記録として、正確性が比較的高いと判断するためです。一方で輸入金額はCIF価格ベースで報告されるため、商品自体の価値に加え、輸送費や保険を含めた金額であることに留意くしてください。

※上記のすべての情報は、あくまで参考として善意で提供されており、データや情報が将来にわたって正確であるという保証はありません。情報を利用する際には、ユーザー自身の判断と責任でご利用ください。

世界の輸入金額傾向

世界の穀物の輸入金額20年推移
世界の穀物の輸入金額20年推移

穀物に関わる製品[第10類:穀物]は、2023年の輸入金額ではおよそ5.6兆円となっており、HSコードの上2桁[類]の97類中、[第25位]の金額となっています。

また、[第10類:穀物]の輸入金額は、2004年のおよそ5.6兆円から、2023年では25.0兆円と20年間で4.48倍に成長しており、成長率は97類中[第12位]となっています。

主要な輸出国と輸出金額の傾向

穀物の輸出金額上位5カ国の輸出金額推移
穀物の輸出金額上位5カ国の輸出金額推移

上のグラフは[第10類:穀物]の輸出金額ランキングTOP5の国々を示しています。2023年における輸出金額は1位がアメリカでおよそ3.3兆円です。続いて2位ブラジルがおよそ2.1兆円3位オーストラリアが1.8兆円4位ロシアが1.6兆円5位インドが1.6兆円となっています。

アメリカが頭一つ抜け出しており、ブラジル、オーストラリア、ロシア、インドは同水準で推移しています。一方、各国がメインで輸出している穀物はそれぞれ異なっており、アメリカはトウモロコシが主軸で、次いで小麦の出荷が多く、ブラジルも圧倒的にトウモロコシの出荷比率が多くなっています。オーストラリアとロシアは小麦が主軸となっており、インドは米が主軸です。この様に同じ穀物分類の中でも土地土地の雨量や環境によって出荷される品目が異なっています。

2023年における穀物の国別輸出シェア
2023年における穀物の国別輸出シェア

2023年の輸出金額における各国のシェアです。トップ5にカナダを加えて世界の輸出金額の50%を占めています。その後にウクライナ、フランス、アルゼンチン、タイ、ルーマニアと続き、これらの国で輸出金額の75%を占めており、穀物の供給国は金額ベースで見るとある程度偏っていると言えます。

ロシアのウクライナ侵攻により、世界の約5.0%の穀物供給が滞るのではと言う危機感から穀物価格が高騰しました。結果的には一時的な輸出停止にはなったものの、輸出金額自体は例年と同水準で推移しました。ウクライナの主な輸出穀物はトウモロコシと小麦であり、スペイン、中国、エジプト、ルーマニアといった国々に輸出されています。

主要な輸入国と輸入金額の傾向

穀物の輸入金額上位5カ国の輸入金額推移
穀物の輸入金額上位5カ国の輸入金額推移

上のグラフは[第10類:穀物]の輸入金額ランキングTOP5の国々を示しています。2023年における輸入金額は1位が中国でおよそ2.9兆円です。続いて2位メキシコがおよそ1.2兆円3位日本が1.1兆円4位スペインが9,600億円5位エジプトが8,900億円となっています。

輸入金額については、2019年までは各国ほとんど金額規模は変わりませんでしたが、2020年以後は急激に中国の輸入金額、輸入量共に激増しました。この背景には三井物産戦略研究所のレポートにおいて以下のように言及されています。

・ 中国で穀物輸入が急拡大している。食肉消費量の増加を背景とした家畜飼料としての需要増が主因。食
の欧風化による小麦の需要増も予想されるなど、国内の穀物需要はさらなる拡大が見込まれている。
・ 政府は輸入量を抑制したい構えだが、国内の農業生産は制約が多く、穀物生産量の伸びは鈍化傾向にあ
り、今後も大量輸入は続く見込み。
・ 中国の穀物の大量輸入は、世界の穀物主産地での供給制約とも相まって、足元では需給逼迫や価格高騰
をもたらしている。一方で、今後も高値が続けば投資・開発のインセンティブが高まることが想定さ
れ、新たなイノベーションが生まれる可能性もある。

引用:三井物産戦略研究所 中国の穀物輸⼊急拡⼤ https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/__icsFiles/afieldfile/2021/10/28/2108i_nozaki.pdf 参照 2024/11/7

上記の通り、食肉の消費量増加に伴う、家畜飼料としての穀物需要が爆発的に増加したことが背景としてある模様です。

2023年における穀物の国別輸入シェア
2023年における穀物の国別輸入シェア

2023年の輸入金額における各国のシェアです。穀物は特定の国に限らず大半の国々で需要があるため、広く国々が輸入をしていますが、上記の栄光もあり中国が世界の10%の穀物を輸入する、最大の需要国となっています。

参考:第10類に含まれる項目一覧(HSコード)

1001:小麦及びメスリン
1002:ライ麦
1003:大麦及び裸麦
1004:オート
1005:とうもろこし
1006:米
1007:グレーンソルガム
1008:そば、ミレット及びカナリーシード並びにその他の穀物