最終更新日: 2026年7月19日(2025年12月24日公布の政令改正までを反映。政令改正のたびに本ページを更新します)
3行でわかる
- 経済安全保障推進法の「特定重要物資」は、政令改正を経て現在16物資です(2022年12月11物資→2024年2月12物資→2025年12月16物資)。
- 指定されると国が「安定供給確保取組方針」を定め、企業の供給確保計画の認定・助成などの支援が動きます。
- 輸入依存は物資ごとに濃淡があり、公表値では肥料原料はほぼ全量輸入、天然ガスは輸入割合97.9%です。
特定重要物資とは
【事実】特定重要物資とは、経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)第7条に基づき政令で指定される物資です。国民の生存や経済活動に不可欠でありながら供給を外部に依存している物資について、国が前もって安定供給確保の枠組みをつくることが制度の目的です。指定の考え方は内閣府の整理で4要件に分かれます。①国民の生存・国民生活・経済活動にとっての重要性、②外部への過度な依存(またはそのおそれ)、③外部の行為による供給途絶等の蓋然性、④この法律による施策の必要性、の4つです。
【事実】指定されると、物資ごとに所管大臣が「安定供給確保取組方針」を策定し、民間事業者が作る「供給確保計画」を認定します。認定を受けた事業者は、基金を通じた助成や日本政策金融公庫の低利融資といった支援を受けられます。つまりこの一覧は、国が予算を付けてでも国内供給網を維持したい品目のリストでもあります。
現行の特定重要物資 全16物資一覧
【事実】以下は政令(令和4年政令第394号)第1条の現行条文を e-Gov 法令検索で確認した一覧です。物資の数は政令第1条に列挙された号の数で、現在16です。内閣府の制度ページも「16種類」と記載しています。輸入依存の欄は、一次ソースで公表値を確認できた物資のみ数値を記載し、それ以外は所管省庁の取組方針を参照先として示します。
| 物資名(政令上の名称・範囲) | 所管省庁 | 指定時期 | 輸入依存の状況(公表値のみ) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 抗菌性物質製剤 | 厚生労働省 | 2022年12月 | βラクタム系抗菌薬(注射剤)の原材料はほぼ100%を中国に依存(厚労省) | 2019年のセファゾリン供給不安が指定の背景 |
| 肥料 | 農林水産省 | 2022年12月 | 尿素・りん安・塩化加里はほぼ全量輸入。尿素はマレーシア74%、りん安は中国72%、塩化加里はカナダ78%(令和6肥料年度・農水省) | りん安・塩化加里は年間需要3か月分の備蓄制度あり |
| 永久磁石 | 経済産業省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | ネオジム磁石等。原料は重要鉱物(希土類)と連動 |
| 工作機械及び産業用ロボット | 経済産業省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | — |
| 航空機の部品 | 経済産業省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | 航空機用原動機・機体構成品に限る |
| 半導体素子及び集積回路 | 経済産業省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | — |
| 蓄電池 | 経済産業省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | — |
| クラウドプログラム | 経済産業省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | 政令上の正式名称は「インターネットその他の高度情報通信ネットワークを通じて電子計算機(入出力装置を含む。)を他人の情報処理の用に供するシステムに用いるプログラム」 |
| 可燃性天然ガス | 経済産業省 | 2022年12月 | 輸入割合97.9%・輸入分は全量LNG(2023年度・資源エネルギー庁) | 国産は2.1% |
| 重要鉱物(金属鉱産物) | 経済産業省 | 2022年12月 | 鉱種ごとに異なる(下記の深掘りセクション参照) | 政令列挙は36鉱種(希土類金属・白金族を各1鉱種と数えた場合)。2024年2月にウランを追加 |
| 船舶の部品 | 国土交通省 | 2022年12月 | 取組方針参照 | 船舶用機関・航海用具・推進器に限定→2025年12月に船体を追加 |
| 先端電子部品 | 経済産業省 | 2024年2月 | 取組方針参照 | 政令上は「コンデンサー、ろ波器及び磁気センサー」。磁気センサーは2025年12月に追加 |
| 人工呼吸器 | 厚生労働省・経済産業省 | 2025年12月 | 取組方針参照 | — |
| 無人航空機 | 経済産業省 | 2025年12月 | 取組方針参照 | — |
| 人工衛星 | 経済産業省 | 2025年12月 | 取組方針参照 | — |
| ロケットの部品 | 経済産業省 | 2025年12月 | 取組方針参照 | 推進装置・機体構成品に限る |
「取組方針参照」の物資は、所管省庁が公表する安定供給確保取組方針(内閣府の取組方針一覧ページからたどれます)に依存構造の記載があります。本記事では一次ソースで数値を確認できたものだけを表に載せています。
追加・見直しの経緯タイムライン
【事実】指定リストは固定ではなく、政令改正で追加・拡大されてきました。
- 2022年12月23日(令和4年政令第394号 公布・施行): 抗菌性物質製剤から船舶の部品までの11物資を初回指定。
- 2024年2月2日(令和6年政令第25号 公布・施行): 先端電子部品(コンデンサー・ろ波器)を追加して12物資に。あわせて重要鉱物の鉱種にウランを追加。
- 2025年12月24日(令和7年政令第437号 公布・施行): 人工呼吸器・無人航空機・人工衛星・ロケットの部品を追加して16物資に。あわせて船舶の部品に船体を、先端電子部品に磁気センサーを追加。
【示唆】追加の方向を見ると、初回指定が「素材・エネルギー・基幹部品」中心だったのに対し、直近の改正では無人航空機・人工衛星・ロケットと、安全保障色の強い完成品・宇宙関連へ広がっています。検索結果や解説記事には「11物資」「12物資」の記述が今も多く残っていますが、これは指定時点の違いであり、現行は政令第1条のとおり16物資です。
重要鉱物の深掘り: 36鉱種の中身とリスクの見方
【事実】16物資のうち調達実務で最も裾野が広いのが「重要鉱物」です。政令はマンガン、ニッケル、コバルト、リチウム、希土類金属、白金族、ガリウム、ゲルマニウム、グラファイト、シリコン、ウランなど36鉱種(希土類金属・白金族を各1鉱種と数えた場合)を列挙しています。リスクの濃淡は鉱種ごとに大きく異なり、供給国の集中度・輸出規制の有無・代替可能性を鉱種単位で見る必要があります。
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実務での使い方: 自社の調達品目が絡むかを確認する
自社の調達品目が特定重要物資に絡むかは、まず上の表の政令名称(範囲の限定を含む)と品目を突き合わせ、該当しそうなら品目のHSコードを特定して貿易統計で自社品目の輸入相手国と依存度を確認する、という流れが実務的です。HSコードの特定には登録不要のHSコード検索(6,744件収載)が使えます。HSコードの特定から依存度確認までの具体的な手順は、同シリーズの輸入依存度の調べ方(税関統計からHHIまでの3ステップ)で詳しく解説しています。
よくある質問
特定重要物資は現在いくつありますか?
現在16物資です。2022年12月に11物資が指定され、2024年2月の政令改正で先端電子部品が加わって12物資に、2025年12月の政令改正で人工呼吸器・無人航空機・人工衛星・ロケットの部品が加わって16物資になりました。根拠は政令(令和4年政令第394号)第1条の現行条文です。
「11物資」や「12物資」と書いてある記事はどれが正しいのですか?
どちらも過去時点では正しい数字です。11物資は2022年12月の初回指定時点、12物資は2024年2月の改正後の時点の数で、2025年12月の改正を反映した現行の数は16物資です。物資数を確認するときは、e-Gov法令検索で政令第1条の現行条文を見るのが確実です。
特定重要物資に指定されると何が起きますか?
所管大臣が安定供給確保取組方針を策定し、事業者が作成する供給確保計画を認定します。認定事業者は基金による助成や低利融資などの支援対象になります。企業側から見ると、設備投資・備蓄・調達先多角化に国の支援を使える枠組みです。
重要鉱物にはどの鉱物が含まれますか?
政令はマンガン、ニッケル、クロム、タングステン、コバルト、リチウム、チタン、希土類金属、白金族、ガリウム、ゲルマニウム、グラファイト、マグネシウム、シリコン、リン、ウランなど36鉱種(希土類金属・白金族を各1鉱種と数えた場合)を列挙しています。ウランは2024年2月の政令改正で追加されました。
指定リストは今後も増えますか?
制度上、政令改正により追加・見直しが可能で、実際に2024年と2025年に追加されています。過去の改正は物資の追加だけでなく、船舶の部品への船体追加のような対象範囲の拡大も含むため、既指定物資の範囲変更にも注意が必要です。本ページは政令改正のたびに更新します。
データソースと注記
- 物資一覧・正式名称・物資数: 経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律施行令(令和4年政令第394号)第1条・e-Gov法令検索(2026年7月19日確認)。改正履歴は同政令附則(令和6年政令第25号・令和7年政令第437号)による。
- 指定の経緯・所管省庁: 内閣府 サプライチェーン強靱化の取組および安定供給確保取組方針一覧(2026年7月19日確認)。
- 天然ガスの輸入割合97.9%(2023年度): 資源エネルギー庁 エネルギー動向(2025年6月版)第1章第3節(2026年7月19日確認)。
- 肥料原料の輸入依存・相手国シェア(令和6肥料年度): 農林水産省「肥料をめぐる情勢」(令和8年6月)(2026年7月19日確認)。経済安全保障推進法第48条第1項に基づく調査結果による。
- 抗菌性物質製剤の中国依存: 厚生労働省 抗菌性物質製剤に係る安定供給確保(2026年7月19日確認)。
- 注記: 輸入依存の数値は公表時点のものであり、調達先の多角化により変動します。表中「取組方針参照」の物資は、本記事執筆時点で一次ソースの数値を確認できなかったため数値を記載していません。
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