こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は、近年急速に伸びつつある、日本の食肉輸出傾向について紹介します。この記事をご覧いただくことにより、日本の食肉輸出の現状と食肉市場の成長率を理解いただくことができます。

  • 食肉業界の輸出金額は10年で成長率700%になっている
  • 「牛肉」に限れば、輸出金額は10年間で1,000%の成長率となっている。
  • 「食用くず肉」は輸出金額が10年間で半分になってしまっている。

に喜んでいただける記事になっています。それでは詳細を見ていきましょう。

データの概要

今回取り扱うのは、輸出統計品目における、

第02類 肉及び食用のくず肉

HS02類には以下の項目が含まれています。

  • 0201:牛の肉(生鮮のもの及び冷蔵したものに限る。)
  • 0202:牛の肉(冷凍したものに限る。)
  • 0203:豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
  • 0204:羊又はやぎの肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
  • 0205:馬、ろ馬、ら馬又はヒニーの肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
  • 0206:食用のくず肉(牛、豚、羊、やぎ、馬、ろ馬、ら馬又はヒニーのもので、生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
  • 0207:肉及び食用のくず肉で、第01.05項の家きんのもの(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
  • 0208:その他の肉及び食用のくず肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
  • 0209:家きんの脂肪及び豚の筋肉層のない脂肪(溶出その他の方法で抽出してないもので、生鮮のもの及び冷蔵し、冷凍し、塩蔵し、塩水漬けし、乾燥し又はくん製したものに限る。)
  • 0210:肉及び食用のくず肉(塩蔵し、塩水漬けし、乾燥し又はくん製したものに限る。)並びに肉又はくず肉の食用の粉及びミール

データソースには2015年1月までは国連COMTRADE統計のデータを、2015年1月以降は日本の財務省貿易統計を利用しています。

貿易金額の10年間のトレンド

2023年の金額ランキングは以下の通りです。

  1. 0201 : 牛の肉(生鮮のもの及び冷蔵したものに限る。) – 29,538,451,000円
  2. 0202 : 牛の肉(冷凍したものに限る。) – 27,160,104,000円
  3. 0203 : 豚の肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。) – 2,057,964,000円
  4. 0207 : 肉及び食用のくず肉で、第01.05項の家きんのもの(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。) – 1,356,092,000円
  5. 0206 : 食用のくず肉(牛、豚、羊、やぎ、馬、ろ馬、ら馬又はヒニーのもので、生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。) – 73,018,000円
  6. 0210 : 肉及び食用のくず肉(塩蔵し、塩水漬けし、乾燥し又はくん製したものに限る。)並びに肉又はくず肉の食用の粉及びミール – 16,538,000円
  7. 0204 : 羊又はやぎの肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。) – 0円
  8. 0205 : 馬、ろ馬、ら馬又はヒニーの肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。) – 0円
  9. 0208 : その他の肉及び食用のくず肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。) – 0円
  10. 0209 : 家きんの脂肪及び豚の筋肉層のない脂肪(溶出その他の方法で抽出してないもので、生鮮のもの及び冷蔵し、冷凍し、塩蔵し、塩水漬けし、乾燥し又はくん製したものに限る。) – 0円
Check Point

2023年の日本の食肉輸出金額ランキングを見ると、生鮮・冷蔵牛肉(0201)が約295億円で最も高く、次いで冷凍牛肉(0202)が約271億円、豚肉(0203)が約20億円と続いています。家きん肉(0207)は約13億円、食用のくず肉(0206)は約7,300万円、塩蔵・塩水漬け・乾燥・くん製肉及び肉の粉・ミール(0210)は約1,653万円となっています。一方、羊・やぎ肉(0204)、馬・ろ馬・ら馬・ヒニー肉(0205)、その他の肉・食用のくず肉(0208)、家きん・豚の脂肪(0209)は輸出実績がありませんでした。

10年間の変化率で市場の変化を読む

2013年から2023年の増加率TOP3:

  1. 0201 : 牛の肉(生鮮のもの及び冷蔵したものに限る。)
    • – 2013年:2,577,704,000円、2023年:29,538,451,000円、増加率:1045.92%
  2. 0210 : 肉及び食用のくず肉(塩蔵し、塩水漬けし、乾燥し又はくん製したものに限る。)並びに肉又はくず肉の食用の粉及びミール
    • – 2013年:1,754,000円、2023年:16,538,000円、増加率:842.87%
  3. 0202 : 牛の肉(冷凍したものに限る。)
    • – 2013年:3,182,967,000円、2023年:27,160,104,000円、増加率:753.30%
Check Point

2013年から2023年にかけて、生鮮・冷蔵牛肉(0201)が約1046%、塩蔵・塩水漬け・乾燥・くん製肉及び肉の粉・ミール(0210)が約843%、冷凍牛肉(0202)が約753%と大幅な増加率を示しています。これらの品目は、10年間で輸出金額が大きく伸びており、日本の食肉輸出における有望な分野であると言えます。特に、生鮮・冷蔵牛肉(0201)は、2013年の約25億7,770万円から2023年には約295億3,845万円へと、10倍以上に増加しています。

2013年から2023年の減少率TOP3:

  1. 0208 : その他の肉及び食用のくず肉(生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
    • – 2013年:1,461,000円、2023年:0円、減少率:-100.00%
  2. 0206 : 食用のくず肉(牛、豚、羊、やぎ、馬、ろ馬、ら馬又はヒニーのもので、生鮮のもの及び冷蔵し又は冷凍したものに限る。)
    • – 2013年:179,056,000円、2023年:73,018,000円、減少率:-59.22%
Check Point

2013年から2023年にかけて、その他の肉・食用のくず肉(0208)が100%減少し、食用のくず肉(0206)が約59%減少しています。特に、その他の肉・食用のくず肉(0208)は、2013年に約146万円の輸出実績がありましたが、2023年には輸出がゼロになっています。

まとめ

日本の食肉輸出は、この10年間で大きな変化が見られました。牛肉(生鮮・冷蔵、冷凍)や豚肉などの主要項目は大幅な増加を遂げた一方、その他の肉及び食用のくず肉、食用のくず肉(牛、豚等)、家きん肉などは減少傾向にあります。今後の市場動向を見極めるには、以下の点に注目すべきでしょう。

  1. 新興国の経済成長に伴う食肉需要の変化:アジアを中心とした新興国の経済成長により、食肉需要が拡大する可能性があります。日本企業は、これらの国々のニーズを的確に捉えた商品開発と販売戦略が重要になります。
  2. 食の安全性と品質管理の重要性:食肉は鮮度や品質管理が特に重要な商品です。日本の高い食の安全性基準と品質管理技術を活かし、差別化を図ることが求められます。
  3. 健康志向の高まりによる赤身肉需要の変化:世界的な健康志向の高まりを受け、脂肪分の少ない赤身肉への需要がどのように変化するかを注視する必要があります。牛肉や豚肉の品質や付加価値の向上が求められるでしょう。

日本の食肉輸出は、牛肉や豚肉を中心に大きな成長を遂げています。健康志向や新興国の需要増加を踏まえつつ、安全性と品質の高さを武器に、さらなる市場開拓が期待できるでしょう。一方で、減少傾向にある項目については、市場ニーズを見極め、商品の見直しや販売戦略の再構築が必要になるかもしれません。変化の激しい市場環境の中で、日本企業には的確な情勢分析と柔軟な対応力が益々重要になるでしょう。高品質な日本の食肉が、世界の食卓に一層の存在感を示すことを期待したいと思います。