こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Twitterはこちら)今回は、日本の基幹産業である自動車業界の輸出傾向について紹介します。この記事をご覧いただくことにより、日本の自動車輸出の現状と傾向を理解いただくことができます

  • 自動車業界の市場変化に関心のあるビジネスパーソンの方々
  • 日本の輸出動向に関心のある方々
  • 市場の変化にご関心のある新規事業やビジネつ開発の方々

に喜んでいただける記事になっています。それでは詳細を見ていきましょう。

データの概要

今回取り扱うのは、輸出統計品目における、

第87類 鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品及び附属品

となります。詳細の項目は以下の通りです。

  • 8701:トラクター(第87.09項のトラクターを除く。)
  • 8702:10人以上の人員(運転手を含む。)の輸送用の自動車
  • 8703:乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン及びレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したものに限るものとし、第87.02項のものを除く。)
  • 8704:貨物自動車
  • 8705:特殊用途自動車(例えば、救難車、クレーン車、消防車、コンクリートミキサー車、道路清掃車、散水車、工作車及びレントゲン車。主として人員又は貨物の輸送用に設計したものを除く。)
  • 8706:原動機付きシャシ(第87.01項から第87.05項までの自動車用のものに限る。)
  • 8707:車体(運転室を含むものとし、第87.01項から第87.05項までの自動車用のものに限る。)
  • 8708:部分品及び附属品(第87.01項から第87.05項までの自動車のものに限る。)
  • 8709:自走式作業トラック(工場、倉庫、埠頭又は空港において貨物の短距離の運搬に使用する種類のものに限るものとし、持上げ用又は荷扱い用の機器を装備したものを除く。)及び鉄道の駅のプラットホームにおいて使用する種類のトラクター並びにこれらの部分品
  • 8710:戦車その他の装甲車両(自走式のものに限るものとし、武器を装備しているかいないかを問わない。)及びその部分品
  • 8711:モーターサイクル(モペットを含むものとし、サイドカー付きであるかないかを問わない。)、補助原動機付きの自転車(サイドカー付きであるかないかを問わない。)及びサイドカー
  • 8712:自転車(運搬用三輪自転車を含むものとし、原動機付きのものを除く。)
  • 8713:身体障害者用又は病人用の車両(原動機その他の機械式駆動機構を有するか有しないかを問わない。)
  • 8714:部分品及び附属品(第87.11項から第87.13項までの車両のものに限る。)
  • 8715:乳母車及びその部分品
  • 8716:トレーラー及びセミトレーラー並びにその他の車両(機械式駆動機構を有するものを除く。)並びにこれらの部分品

データソースには2015年1月までは国連COMTRADE統計のデータを、2015年1月以降は日本の財務省貿易統計を利用しています。

貿易金額の10年間のトレンド

HS87の輸出金額10年間推移の線形グラフ

2023年の取引金額TOP5:

  1. 乗用自動車その他の自動車:15兆4358億7572万円
  2. 部分品及び附属品(第87.01項から第87.05項までの自動車のものに限る。):3兆7941億961万円
  3. 貨物自動車:1兆3160億2761万円
  4. モーターサイクル:4897億9454万円
  5. 10人以上の人員(運転手を含む。)の輸送用の自動車:3206億2863万円

2023年の日本からの車両関連輸出は、乗用自動車が最も高い金額を示し、15兆4359億円に達しました。次いで、自動車部品が約3兆7941億円、貨物自動車が約1兆3160億円と続いています。上位5項目だけで全体の約9割を占めており、日本の車両関連輸出を牽引していることがわかります。特に乗用車は群を抜いて高い金額を示しており、日本の主力輸出品であることを裏付けています。

87類は項目が多くグラフでは分かりづらい部分があるため、以下に片対数グラフと2023年の輸出金額のランキングを整理しました。

HS87の輸出金額10年間推移の対数グラフ

2023年の金額データでランキング:

15兆4359億円 – 8703:乗用自動車その他の自動車(ステーションワゴン及びレーシングカーを含み、主として人員の輸送用に設計したものに限るものとし、第87.02項のものを除く。)
3兆7941億円 – 8708:部分品及び附属品(第87.01項から第87.05項までの自動車のものに限る。)
1兆3160億円 – 8704:貨物自動車
4898億円 – 8711:モーターサイクル(モペットを含むものとし、サイドカー付きであるかないかを問わない。)、補助原動機付きの自転車(サイドカー付きであるかないかを問わない。)及びサイドカー
3206億円 – 8702:10人以上の人員(運転手を含む。)の輸送用の自動車
2404億円 – 8701:トラクター(第87.09項のトラクターを除く。)
2230億円 – 8714:部分品及び附属品(第87.11項から第87.13項までの車両のものに限る。)
350億円 – 8706:原動機付きシャシ(第87.01項から第87.05項までの自動車用のものに限る。)
180億円 – 8705:特殊用途自動車(例えば、救難車、クレーン車、消防車、コンクリートミキサー車、道路清掃車、散水車、工作車及びレントゲン車。主として人員又は貨物の輸送用に設計したものを除く。)
68億円 – 8707:車体(運転室を含むものとし、第87.01項から第87.05項までの自動車用のものに限る。)
68億円 – 8716:トレーラー及びセミトレーラー並びにその他の車両(機械式駆動機構を有するものを除く。)並びにこれらの部分品
64億円 – 8712:自転車(運搬用三輪自転車を含むものとし、原動機付きのものを除く。)
46億円 – 8709:自走式作業トラック(工場、倉庫、埠頭又は空港において貨物の短距離の運搬に使用する種類のものに限るものとし、持上げ用又は荷扱い用の機器を装備したものを除く。)及び鉄道の駅のプラットホームにおいて使用する種類のトラクター並びにこれらの部分品
2.9億円 – 8713:身体障害者用又は病人用の車両(原動機その他の機械式駆動機構を有するか有しないかを問わない。)
0.6億円 – 8715:乳母車及びその部分品
0.0億円 – 8710:戦車その他の装甲車両(自走式のものに限るものとし、武器を装備しているかいないかを問わない。)及びその部分品

2023年は輸出が好調で日本全体で100兆円を超えましたが、内15兆円が自動車の輸出となります。

10年間の変化率で市場の変化を読む

2013年から2023年の増加率TOP3:

  1. 車体(運転室を含むものとし、第87.01項から第87.05項までの自動車用のものに限る。):2013年の310億円から2023年の679億円へ、118.60%増加
  2. モーターサイクル:2013年の2,764億円から2023年の4,898億円へ、77.15%増加
  3. 乗用自動車その他の自動車:2013年の8兆9,322億円から2023年の15兆4,358億円へ、72.81%増加

この10年間で、車体、モーターサイクル、乗用車の輸出金額が大幅に増加しました。中でも車体の伸び率は118.60%と著しく、2013年に約310億円だった輸出金額が、2023年には約679億円にまで拡大しました。モーターサイクルと乗用車も、それぞれ77.15%、72.81%の高い増加率を示しています。これらの項目は、日本の車両関連輸出の成長を牽引してきたと言えます。

2013年から2023年の減少率TOP3:

  1. 原動機付きシャシ:2013年の1,209億円から2023年の350億円へ、71.10%減少
  2. 特殊用途自動車:2013年の272億円から2023年の180億円へ、33.89%減少
  3. 乳母車及びその部分品:2013年の9,586万円から2023年の6,376万円へ、33.48%減少

一方、原動機付きシャシ、特殊用途自動車、乳母車の輸出金額は大きく減少しました。原動機付きシャシは2013年に約1,209億円あった輸出金額が、2023年には約350億円まで落ち込み、71.10%もの大幅な減少となっています。特殊用途自動車と乳母車も、それぞれ33.89%、33.48%の減少率を示しています。これらの項目は、市場ニーズの変化や技術の進歩により需要が低下したと考えられます。

まとめ

日本の車両関連輸出は、この10年間で大きな変化が見られました。乗用車や自動車部品、モーターサイクルなどの主要項目は好調な伸びを示す一方、原動機付きシャシや特殊車両、乳母車などは減少傾向にあリマス。今後の市場動向を見極めるには、以下の点に注目ポイントとなります。

  1. 環境意識の高まりを受けた電気自動車シフトの影響:ガソリン車から電気自動車への移行が進む中、日本企業は電動化技術の開発と競争力強化が求められる。
  2. 新興国の経済成長に伴う需要の変化:アジアを中心とした新興国の経済成長により、現地での車両需要が拡大する可能性がある。日本企業は現地ニーズを捉えた製品開発と販売戦略が重要になる。
  3. 自動運転技術など新技術の進展がもたらす市場の変容:自動運転やコネクテッドカーなどの新技術が急速に進歩する中、日本企業はこれらの技術を取り入れた新たな価値提案が求められる。

日本の車両関連企業は、これらの変化を的確に捉え、競争力のある製品を開発・販売していく必要があります。特に、成長著しい乗用車やモーターサイクル、自動車部品などの分野では、品質や技術力を武器に市場シェアを拡大するチャンスがありそうです。一方、減少傾向にある項目については、市場ニーズを見極め、事業の選択と集中を進めることが求められます。

今後も変化の激しい市場が予想されるだけに、柔軟な対応力と先見性が日本企業には欠かせません。自社の強みを活かしつつ、時代の変化に合わせて事業を変革していくことが、持続的な成長につながります。日本の車両関連企業が、グローバル市場でさらなる存在感を発揮していくことを期待したいです。