3行でわかる
- ある品目の輸入依存度(相手国集中)は、①HSコードを特定→②財務省貿易統計「品別国別表」で相手国別の年間輸入額を取得→③シェアの2乗和(HHI)を計算、の3ステップで調べられます。
- 実例では、コーヒー生豆の輸入はブラジル33.1%・ベトナム22.1%などでHHI約1,860、うなぎ調製品は中国99.8%でHHI約9,958と、品目により集中度は桁違いです。
- 登録も費用も不要で、公的統計だけで完結します。本記事の手順はすべて実際の画面と公表値で検証済みです。
前提:「輸入依存度」には2つの意味があります
「輸入依存度」という言葉は、実務では2つの別物を指します。①ある品目の輸入が特定の相手国にどれだけ集中しているか(輸入相手国の集中度)と、②国内消費に占める輸入品の割合(輸入浸透度・自給率の裏返し)です。②は生産統計や需給表が必要で調べ方がまったく異なるため、本記事は調達・購買実務で使う頻度が高い①だけを扱います。
もう1点、集中度の指標として使うHHI(ハーフィンダール・ハーシュマン指数)について先に切り分けます。HHIで検索すると、公正取引委員会の企業結合審査(合併時に市場の寡占度を測る文脈)の解説がほとんどを占めます。公取委の運用指針では、水平型企業結合のセーフハーバーとして「企業結合後のHHIが1,500以下」などの基準が示されていますが(出典:企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針・確認日2026-07-19)、これは企業の市場シェアに適用する競争法の文脈です。本記事で計算するのは、同じ数式を輸入相手国のシェアに当てはめた輸入集中度のHHIで、文脈は別物です。数式は共通で、各シェア(%)を2乗して合計するだけです。1カ国100%なら100²=10,000、多数の国に分散するほど0に近づきます。
Step 1:調べたい品目のHSコード(統計品目番号)を特定します
【事実】貿易統計は品目を「HSコード」の体系で集計しています。上2桁が「類」(例:09類=コーヒー・茶など)、4桁が「項」、6桁までが世界共通の「号」で、日本の輸入統計はさらに細分した9桁の統計品目番号ごとに集計されます。財務省貿易統計の検索にはこの9桁(または上位2・4・6桁)が必要です。
特定の手段は2つあります。まず当たりを付けるには、日本語で引けるHSコード検索ツールが便利です(登録不要・無料。HS2017準拠の6,744件を2桁・4桁・6桁で検索できます。訳語はAI翻訳ベースで税関公式訳ではありません)。6桁まで当たりを付けたら、税関の実行関税率表(輸入の場合。輸出は輸出統計品目表)で該当する類のページを開き、9桁の統計細分を確定します。たとえばコーヒー生豆(煎っていない・カフェイン除去なし)は「0901.11-000」です(実行関税率表2026年7月9日版・第9類で確認)。
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Step 2:財務省貿易統計「品別国別表」で品目×相手国の年間輸入額を取得します
【事実】財務省貿易統計の検索ページを開くと、普通貿易統計の統計表が一覧で並んでいます。使うのは「統計品目情報」の先頭にある「品別国別表」(各品目についてどの国と貿易しているかの統計表)です。以下の手順は実際の検索画面で確認したものです(確認日2026-07-19)。
- 輸出入の指定:「輸入」を選びます。
- 統計年月の指定:「年内の累計」を選び、調べたい年と年分類「年(1~12月)」を選ぶと暦年1年分になります。なお「単一年月」の累計欄は1月からの累計のため、12月を指定して年分を得る方法も公式に案内されています。
- 品目の指定:「品目コード指定」を選び、Step 1で確定した9桁コード(例:090111000)を入力します。統計品目番号は上位2桁・4桁・6桁でも検索でき、複数コードは半角空白区切りで指定できます。
- 国の指定:「全対象指定」のままにします(全相手国が対象になります)。
- 表示件数を選んで検索すると、相手国ごとの数量と金額(単位:千円)の一覧が表示されます。検索結果が3,000件以内ならCSV形式でダウンロードでき、表を範囲選択して表計算ソフトに貼り付けることもできます。
【事実】輸入額はCIF価格(運賃・保険料込み)ベースです。また、公表済みの統計は確認日時点で2026年5月分までで、数値は速報→確報→確定の順に改訂されることがあります。
Step 3:相手国シェアとHHIを計算します
計算は2段階です。相手国シェア=各国の輸入額÷合計輸入額×100、HHI=全相手国のシェア(%)の2乗の合計。これだけです。コーヒー生豆(0901.11-000)の2024年(暦年)輸入・金額ベースの実例で示します(数値は財務省貿易統計の検索結果・確認日2026-07-19。相手国は49カ国、合計241,073,238千円)。
| 順位 | 相手国 | 輸入額(千円) | シェア | シェアの2乗 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ブラジル | 79,682,489 | 33.05% | 1,092.5 |
| 2 | ベトナム | 53,243,256 | 22.09% | 487.8 |
| 3 | コロンビア | 27,830,644 | 11.54% | 133.3 |
| 4 | グアテマラ | 16,145,821 | 6.70% | 44.9 |
| 5 | エチオピア | 15,788,245 | 6.55% | 42.9 |
| 6 | インドネシア | 14,144,075 | 5.87% | 34.4 |
| — | その他43カ国 | 34,238,708 | 14.20% | 約24.2※ |
| 合計 | 241,073,238 | 100% | HHI ≈ 1,860 | |
※注意点が1つあります。「その他」をひとまとめにして14.20%を2乗してはいけません(それだけで約202になり、結果が大きく歪みます)。2乗は必ず国ごとに行い、その合計を足します。上の24.2は残り43カ国を個別に2乗した合計です。もっとも、シェアの小さい国の2乗はほぼゼロのため、実務では上位10カ国程度でHHIはほぼ確定します(本例では上位10カ国だけで1,857、全49カ国で1,860)。Excelなら、シェア%を並べた範囲に対して =SUMPRODUCT(範囲^2) の1式で計算できます。
計算結果はどう読めばいいですか(解釈の目安)
【示唆】輸入集中度のHHIに公的な閾値はありません。当社では、競争法で「集中が低い」とされる1,500〜2,500の帯を参考にしつつ、2,500超で特定国依存が強い、5,000超で事実上の一国依存を実務の目安にしています。対比のための実例を1つ挙げます。うなぎ調製品(1604.17-000)の2024年輸入は合計57,439,570千円のうち中国が99.79%・台湾が0.21%で、HHIは約9,958です(同検索・確認日2026-07-19)。コーヒー生豆の約1,860と比べると、同じ「輸入品」でも構造リスクがまったく異なることが数字で見えます。前者は代替調達の余地が広く、後者は相手国側の規制・不作・物流障害がそのまま国内供給に直結します。
発展:日本以外の国の輸入依存を調べるには
同じ計算を「米国の半導体輸入」「ドイツの化学品輸入」のように世界側で行うには、各国税関の申告を国連が集約したUN Comtradeか、その輸出入の食い違いを研究用に調整したCEPII BACIを使います。単発で最新値を見るならComtrade、多国×多品目を一括処理するならBACIという使い分けが実用的です。詳しい手順は別記事「UN Comtradeの使い方」で解説しています。
よくある質問
輸入依存度はどうやって調べればいいですか?
品目のHSコード(9桁の統計品目番号)を特定し、財務省貿易統計の「品別国別表」で相手国別の年間輸入額を検索し、各国シェアの2乗和(HHI)を計算します。登録不要・無料で、本記事の3ステップをなぞればそのまま再現できます。
HSコードが分からないときは、何から手を付ければいいですか?
まず日本語キーワードでHSコード検索ツールを引いて6桁まで当たりを付け、税関の実行関税率表の該当類ページで9桁の統計細分を確定する、という2段構えが早いです。関税分類の正式判断が必要な場合は税関の事前教示制度を使います。
輸入集中度のHHIは、いくつを超えると「高い」と言えますか?
公的な閾値はありません。競争法の企業結合審査ではHHI1,500以下などがセーフハーバーとされますが、これは企業シェアの文脈です。輸入集中度では2,500超で特定国依存が強い、5,000超で事実上の一国依存、というのが当社の実務目安です。
シェアは金額と数量のどちらで計算すべきですか?
まず金額ベースが標準です。品目内の単価差や品質差を含めて「調達額としての依存」を表すためです。単一規格の原材料など数量の意味が明確な品目では、数量ベースを併記すると単価要因と数量要因を切り分けられます。
日本以外の国の輸入依存度も同じ方法で調べられますか?
計算方法(シェアの2乗和)は同じですが、データ源が変わります。UN ComtradeやCEPII BACIで対象国×品目の輸入額を取得すれば、本記事のStep 3をそのまま適用できます。
計算したHHIは、来年動きます
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データソースと注記
- 財務省貿易統計(税関)「品別国別表」検索結果:0901.11-000および1604.17-000、2024年(暦年)・輸入・金額(千円・CIF)。検索ページ https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm (確認日2026-07-19)。出典明記のうえ利用しています。
- 実行関税率表(2026年7月9日版・税関) https://www.customs.go.jp/tariff/index.htm — 統計品目番号の確認に使用(確認日2026-07-19)。
- 公正取引委員会「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」 https://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/shishin.html (確認日2026-07-19)— 競争法文脈のHHI基準の参照のみ。
- 本文の輸入額・シェア・HHIは確認日時点の公表値に基づきます。貿易統計は速報→確報→確定の順で改訂されるため、最新値は必ず原典で再確認してください。シェア・HHIはlanes.infoによる計算値です。
- HHIの読み方の目安(2,500超・5,000超)は当社の実務上の解釈であり、公的基準ではありません。
- ITC Trade Mapなど転載条件に制約のあるデータベースの数値は本記事では使用していません。