こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Twitterはこちら)今回は、近年急速に伸びつつある、日本の医療・医薬品輸入傾向について紹介します。この記事をご覧いただくことにより、日本の医療・医薬品輸入の現状と市場の成長率を理解いただくことができます。

  • 医療・医薬品の市場変化に関心のあるビジネスパーソンの方々
  • 日本の輸入動向に関心のある方々
  • 市場の変化にご関心のある新規事業やビジネス開発の方々

に喜んでいただける記事になっています。それでは詳細を見ていきましょう。

データの概要

今回取り扱うのは、輸入統計品目における、

第30類 医療用品

HS30類には以下の項目が含まれています。

  • 3001:臓器療法用の腺その他の器官(乾燥したものに限るものとし、粉状にしてあるかないかを問わない。)及び腺その他の器官又はその分泌物の抽出物で臓器療法用のもの並びにヘパリン及びその塩並びに治療用又は予防用に調製したその他の人又は動物の物質(他の項に該当するものを除く。)
  • 3002:人血、治療用、予防用又は診断用に調製した動物の血、免疫血清その他の血液分画物及び免疫産品(変性したものであるかないか又は生物工学的方法により得たものであるかないかを問わない。)、ワクチン、毒素、培養微生物(酵母を除く。)その他これらに類する物品並びに細胞培養物(変性したものであるかないかを問わない。)
  • 3003:医薬品(治療用又は予防用に混合した二以上の成分から成るもので、投与量にしてなく、かつ、小売用の形状又は包装にしてないものに限るものとし、第30.02項、第30.05項又は第30.06項の物品を除く。)
  • 3004:医薬品(混合し又は混合してない物品から成る治療用又は予防用のもので、投与量にしたもの(経皮投与剤の形状にしたものを含む。)又は小売用の形状若しくは包装にしたものに限るものとし、第30.02項、第30.05項又は第30.06項の物品を除く。)
  • 3005:脱脂綿、ガーゼ、包帯その他これらに類する製品(例えば、被覆材、ばんそうこう及びパップ剤)で、医薬を染み込ませ若しくは塗布し又は医療用若しくは獣医用として小売用の形状若しくは包装にしたもの
  • 3006:この類の注4の医療用品

データソースには2015年1月までは国連COMTRADE統計のデータを、2015年1月以降は日本の財務省貿易統計を利用しています。

貿易金額の10年間のトレンド

2023年の金額データでランキング:

  • 2兆1,708億3,060万円 – 3004:医薬品(混合し又は混合してない物品から成る治療用又は予防用のもので、投与量にしたもの(経皮投与剤の形状にしたものを含む。)又は小売用の形状若しくは包装にしたものに限るものとし、第30.02項、第30.05項又は第30.06項の物品を除く。)
  • 1兆9,428億9,780万円 – 3002:人血、治療用、予防用又は診断用に調製した動物の血、免疫血清その他の血液分画物及び免疫産品(変性したものであるかないか又は生物工学的方法により得たものであるかないかを問わない。)、ワクチン、毒素、培養微生物(酵母を除く。)その他これらに類する物品並びに細胞培養物(変性したものであるかないかを問わない。)
  • 996億6,170万円 – 3006:この類の注4の医療用品
  • 545億530万円 – 3003:医薬品(治療用又は予防用に混合した二以上の成分から成るもので、投与量にしてなく、かつ、小売用の形状又は包装にしてないものに限るものとし、第30.02項、第30.05項又は第30.06項の物品を除く。)
  • 302億9,560万円 – 3005:脱脂綿、ガーゼ、包帯その他これらに類する製品(例えば、被覆材、ばんそうこう及びパップ剤)で、医薬を染み込ませ若しくは塗布し又は医療用若しくは獣医用として小売用の形状若しくは包装にしたもの
  • 159億5,810万円 – 3001:臓器療法用の腺その他の器官(乾燥したものに限るものとし、粉状にしてあるかないかを問わない。)及び腺その他の器官又はその分泌物の抽出物で臓器療法用のもの並びにヘパリン及びその塩並びに治療用又は予防用に調製したその他の人又は動物の物質(他の項に該当するものを除く。)
Check Point

2023年の日本の医療品輸入は、投与量にした医薬品が最も高い金額を示し、約2兆1,708億円に達しました。免疫血清や血液分画物などが約1兆9,429億円で続き、医療用品が約997億円、混合した医薬品が約545億円、脱脂綿やガーゼなどの医療用品が約303億円と続きます。これらの項目が医療品輸入全体の大部分を占めています。

10年間の変化率で市場の変化を読む

2013年から2023年の増加率TOP3:

  • 3002:人血、治療用、予防用又は診断用に調製した動物の血、免疫血清その他の血液分画物及び免疫産品(変性したものであるかないか又は生物工学的方法により得たものであるかないかを問わない。)、ワクチン、毒素、培養微生物(酵母を除く。)その他これらに類する物品並びに細胞培養物(変性したものであるかないかを問わない。)
    • – 2013年の4兆7,349億3,250万円から2023年の1兆9,428億9,780万円へ、310.33%増加
  • 3003:医薬品(治療用又は予防用に混合した二以上の成分から成るもので、投与量にしてなく、かつ、小売用の形状又は包装にしてないものに限るものとし、第30.02項、第30.05項又は第30.06項の物品を除く。)
    • – 2013年の241億8,940万円から2023年の545億530万円へ、125.33%増加
  • 3006:この類の注4の医療用品
    • – 2013年の586億2,630万円から2023年の996億6,170万円へ、69.99%増加
Check Point

この10年間で、免疫血清や血液分画物などの輸入金額が大幅に増加し、2013年から2023年までの増加率は310.33%に達しました。また、混合した医薬品も125.33%、医療用品も69.99%の高い増加率を示しています。これらの項目は、日本の医療品輸入を牽引してきたと言えるでしょう。

2013年から2023年の減少率TOP3:

該当する項目はありません。全ての項目で増加傾向が見られます。

まとめ

日本の医薬品輸入は、この10年間で大きな増加傾向を示しました。特に、免疫血清や血液分画物などの輸入金額は著しい伸びを見せ、日本の医薬品輸入を牽引しています。また、混合した医薬品や医療用品の輸入も大幅に増加しています。一方で、減少傾向を示した項目は一つもありませんでした。

今後の市場動向を見極めるには、以下の点に注目すべきでしょう。

  1. コロナ禍によるワクチン輸入の急増:コロナウイルスの影響により、2020年以降ワクチンを含む輸入が急激に増加していま下が、5類感染症移行後は輸入傾向が落ち着く可能性があります。今後の感染症動向により、輸入動向に変化が予想されます。
  2. バイオ医薬品や再生医療等の新技術の影響:バイオテクノロジーを応用したバイオ医薬品や、再生医療等の新しい医療技術の発展により、医薬品市場が大きく変化する可能性があります。これらの新技術を用いた医薬品の輸入動向に注目が集まります。
  3. 高齢化社会の進展による医療需要の変化:日本では高齢化が急速に進んでおり、これに伴う医療需要の変化が医薬品輸入に大きな影響を与える可能性があります。特に、慢性疾患や老人性疾患に関連する医薬品の需要増加が予想されます。

日本の医薬品輸入は、高齢化社会の進展やバイオ医薬品・再生医療等の新技術の発展を背景に、今後も増加傾向が続くことが予想されます。一方で、国際的な医薬品供給体制の変化には注意が必要です。日本企業には、こうした市場環境の変化を的確に捉え、適切な調達戦略を立てることが求められるでしょう。同時に、国内外の規制動向にも注視し、コンプライアンスの確保に努めることが重要です。医薬品の安定的な供給を確保しつつ、国民の健康と医療の質の向上に貢献していくことが期待されます。