こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Twitterはこちら)今回は、近年急速に伸びつつある、日本のニッケル輸入傾向について紹介します。この記事をご覧いただくことにより、日本のニッケル輸入の現状と市場の成長率を理解いただくことができます。
- ニッケルの市場変化に関心のあるビジネスパーソンの方々
- 日本の輸入動向に関心のある方々
- 市場の変化にご関心のある新規事業やビジネス開発の方々
に喜んでいただける記事になっています。それでは詳細を見ていきましょう。
データの概要
今回取り扱うのは、輸入統計品目における、
第75類 ニッケル及びその製品
HS75類には以下の項目が含まれています。
- 7501:ニッケルのマット、焼結した酸化ニッケルその他ニッケル製錬の中間生産物
- 7502:ニッケルの塊
- 7503:ニッケルのくず
- 7504:ニッケルの粉及びフレーク
- 7505:ニッケルの棒、形材及び線
- 7506:ニッケルの板、シート、ストリップ及びはく
- 7507:ニッケル製の管及び管用継手(例えば、カップリング、エルボー及びスリーブ)
- 7508:その他のニッケル製品
データソースには2015年1月までは国連COMTRADE統計のデータを、2015年1月以降は日本の財務省貿易統計を利用しています。
貿易金額の10年間のトレンド
2023年の金額データでランキング:
- 3,629億9,120万円 – 7501:ニッケルのマット、焼結した酸化ニッケルその他ニッケル製錬の中間生産物
- 1,506億2,500万円 – 7502:ニッケルの塊
- 254億7,830万円 – 7503:ニッケルのくず
- 221億40万円 – 7504:ニッケルの粉及びフレーク
- 176億2,330万円 – 7506:ニッケルの板、シート、ストリップ及びはく
- 127億8,890万円 – 7505:ニッケルの棒、形材及び線
- 102億8,790万円 – 7508:その他のニッケル製品
- 21億950万円 – 7507:ニッケル製の管及び管用継手(例えば、カップリング、エルボー及びスリーブ)
2023年の日本のニッケル輸入は、ニッケルのマットや焼結した酸化ニッケルなどの中間生産物が最も高い金額を示し、約3,630億円に達しました。ニッケルの塊が約1,506億円で続き、ニッケルのくずが約255億円、ニッケルの粉及びフレークが約221億円、ニッケルの板・シート等が約176億円と続きます。これらの項目がニッケル輸入全体の大部分を占めています。
10年間の変化率で市場の変化を読む
2013年から2023年の増加率TOP3:
- 7503:ニッケルのくず
- – 2013年の82億9,730万円から2023年の254億7,830万円へ、207.07%増加
- 7505:ニッケルの棒、形材及び線
- – 2013年の47億4,190万円から2023年の127億8,890万円へ、169.70%増加
- 7502:ニッケルの塊
- – 2013年の556億6,260万円から2023年の1,506億2,500万円へ、170.60%増加
この10年間で、ニッケルのくず、ニッケルの棒・形材・線、ニッケルの塊の輸入金額が大幅に増加しました。特にニッケルのくずの伸び率は207.07%と際立っています。2013年に約83億円だった輸入金額が、2023年には約255億円にまで拡大しました。ニッケルの棒・形材・線とニッケルの塊も、それぞれ169.70%、170.60%の高い増加率を示しています。
2013年から2023年の減少率TOP3:
- 7507:ニッケル製の管及び管用継手
- – 2013年の24億590万円から2023年の21億950万円へ、12.32%減少
一方、ニッケル製の管及び管用継手の輸入金額のみが減少しました。2013年に約24億円あった輸入金額が、2023年には約21億円まで落ち込み、12.32%の減少率を示しています。他の項目については、全て増加傾向にあります。
まとめ
日本のニッケル輸入は、この10年間で大きな変化が見られました。ニッケルのマットや焼結した酸化ニッケルなどの中間生産物、ニッケルの塊、ニッケルのくずなどの主要項目は大幅な増加を遂げた一方、ニッケル製の管及び管用継手のみが減少傾向にあります。今後の市場動向を見極めるには、以下の点に注目すべきでしょう。
- 電気自動車や蓄電池需要の拡大:ニッケルは電気自動車のバッテリーや蓄電池の主要材料です。世界的な電動化の流れの中で、ニッケル需要がどのように変化するかを注視する必要があります。
- 新興国の経済成長に伴うステンレス鋼需要の変化:ニッケルはステンレス鋼の重要な原材料です。アジアを中心とした新興国の経済成長により、ステンレス鋼需要が拡大する可能性があります。日本企業は、これらの国々のニーズを的確に捉えた供給体制の構築が求められます。
- 資源価格の変動リスク:ニッケルは国際商品市場で取引される資源であり、価格変動リスクがあります。為替レートの変動も含め、価格変動が輸入コストに与える影響を注視する必要があります。
日本のニッケル輸入は、電気自動車や蓄電池、ステンレス鋼などの需要拡大を背景に、総じて増加傾向にあります。一方で、資源価格の変動リスクには留意が必要です。変化の激しい市場環境の中で、日本企業には的確な情勢分析と柔軟な調達戦略が益々重要になるでしょう。ニッケルの安定的な調達を確保しつつ、付加価値の高い製品開発により、国際競争力を高めていくことが求められます。