こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は日本の飲料とアルコールの輸入について紹介します。この記事をご覧いただくことにより、日本の飲料&アルコール輸入の現状と市場の成長率を理解いただくことができます。
- 飲料&アルコールの市場変化に関心のあるビジネスパーソンの方々
- 日本の輸入動向に関心のある方々
- 市場の変化にご関心のある新規事業やビジネス開発の方々
に喜んでいただける記事になっています。それでは詳細を見ていきましょう。
データの概要
今回取り扱うのは、輸入統計品目における、
第22類 飲料、アルコール及び食酢
HS22類には以下の項目が含まれています。
- 2201: 水(天然又は人造の鉱水及び炭酸水を含むものとし、砂糖その他の甘味料又は香味料を加えたものを除く。)、氷及び雪
- 2202: 水(鉱水及び炭酸水を含むものとし、砂糖その他の甘味料又は香味料を加えたものに限る。)その他のアルコールを含有しない飲料
- 2203: ビール
- 2204: ぶどう酒(強化ぶどう酒を含むものとし、生鮮のぶどうから製造したものに限る。)及びぶどう搾汁
- 2205: ベルモットその他のぶどう酒(生鮮のぶどうから製造したもので、植物又は芳香性物質により香味を付けたものに限る。)
- 2206: その他の発酵酒並びに発酵酒とアルコールを含有しない飲料との混合物及び発酵酒の混合物
- 2207: エチルアルコール(変性させてないものでアルコール分が80%以上のものに限る。)及び変性アルコール
- 2208: エチルアルコール(変性させてないものでアルコール分が80%未満のものに限る。)及び蒸留酒、リキュールその他のアルコール飲料
- 2209: 食酢及び酢酸から得た食酢代用物
データソースには2015年1月までは国連COMTRADE統計のデータを、2015年1月以降は日本の財務省貿易統計を利用しています。
貿易金額の10年間のトレンド
2023年の金額データでランキング:
- 2204: ぶどう酒 – 2,493億8,067万円
- 2208: エチルアルコール(80%未満)、蒸留酒、リキュール等 – 1,117億7,445万4,000円
- 2207: エチルアルコール(80%以上)、変性アルコール – 988億8,863万5,000円
- 2202: 甘味料や香味料を加えた水、その他のノンアルコール飲料 – 350億3,625万9,000円
- 2201: 水、氷及び雪 – 141億5,347万6,000円
- 2203: ビール – 96億9,922万6,000円
- 2209: 食酢及び酢酸から得た食酢代用物 – 15億7,458万6,000円
- 2206: その他の発酵酒、混合物 – 107億2,862万9,000円
- 2205: ベルモット、香味付けぶどう酒 – 11億2,904万9,000円
2023年の日本の飲料・アルコール輸入統計では、ぶどう酒が約2,494億円で最も多く、全体の約45%を占めています。次いで、エチルアルコール(80%未満)や蒸留酒、リキュールなどが約1,118億円で20%、エチルアルコール(80%以上)や変性アルコールが約989億円で18%を占めています。これらトップ3で全体の83%を占めており、日本のアルコール輸入市場が高級ワインや蒸留酒を中心に構成されていることがわかります。ビールと甘味料を加えた水・ノンアルコール飲料がそれに続いています。
10年間の変化率で市場の変化を読む
2013年から2023年の増加率TOP3:
- 2207: エチルアルコール(80%以上)、変性アルコール
- 2013年: 427億5,821万8,000円 2023年: 988億8,863万5,000円 増加率: 131.3%
- 2208: エチルアルコール(80%未満)、蒸留酒、リキュール等
- 2013年: 654億4,951万円 2023年: 1,117億7,445万4,000円 増加率: 70.8%
- 2209: 食酢及び酢酸から得た食酢代用物
- 2013年: 9億9,503万6,000円 2023年: 15億7,458万6,000円 増加率: 58.2%
2013年から2023年の10年間で、最も成長率が高かったのはエチルアルコール(80%以上)と変性アルコールで、131.3%の増加を示しました。これは産業用アルコールの需要増加や、高濃度アルコール飲料の人気上昇を反映している可能性があります。次いで、エチルアルコール(80%未満)や蒸留酒、リキュールなどが70.8%の成長を見せ、高級酒やクラフトスピリッツの需要増加を示唆しています。第3位は食酢と酢酸から得た食酢代用物で、58.2%の増加率でした。これは健康志向の高まりや、調理用酢の多様化による需要拡大を反映していると考えられます。
2013年から2023年の減少率TOP3:
- 2201: 水、氷及び雪
- 2013年: 262億4,425万6,000円 2023年: 141億5,347万6,000円 減少率: 46.1%
- 2206: その他の発酵酒、混合物
- 2013年: 235億2,422万4,000円 2023年: 107億2,862万9,000円 減少率: 54.4%
- 2205: ベルモット、香味付けぶどう酒
- 2013年: 10億2,591万8,000円 2023年: 11億2,904万9,000円 減少率: 10.1%
2013年から2023年の10年間で、最も減少率が高かったのはその他の発酵酒と混合物で、54.4%の減少を示しました。これは消費者の嗜好の変化や、国内生産の増加による輸入代替の可能性を示唆しています。次いで、水、氷及び雪の輸入が46.1%減少しており、国内の水資源の活用や、環境意識の高まりによるペットボトル飲料離れなどが影響している可能性があります。第3位はベルモットと香味付けぶどう酒で、10.1%の減少率でした。これはカクテル文化の変化や、代替品の台頭による需要の低下を反映していると考えられます。
まとめ
日本の飲料・アルコール輸入市場は、2013年から2023年の10年間で大きな変化を遂げています。ぶどう酒が約2,494億円で最大の輸入品目となり、高級ワイン市場の拡大を示しています。また、エチルアルコールや蒸留酒、リキュールの輸入も大きく伸びており、日本の消費者の嗜好が多様化し、高品質なアルコール飲料への需要が高まっていることがわかります。
一方で、水や発酵酒の輸入は減少傾向にあり、国内生産の増加や消費者の嗜好の変化が影響していると考えられます。特に注目すべきは、エチルアルコール(80%以上)の輸入が131.3%も増加していることで、これは産業用途や高濃度アルコール飲料の需要増加を示唆しています。
市場の変化や機会とリスクに関する考えるべき視点として、以下の3点が挙げられます:
- 高級アルコール市場の拡大:ワインや蒸留酒の輸入増加は、高付加価値商品への需要の高まりを示しています。この傾向を踏まえ、プレミアム商品の開発や輸入戦略の見直しが重要です。
- 健康志向と多様化する消費者ニーズ:ノンアルコール飲料や食酢の輸入増加は、健康意識の高まりを反映しています。これらの需要に応える新商品開発や、既存商品のリポジショニングが求められます。
- 環境問題と国内生産への影響:水の輸入減少は、環境意識の高まりや国内生産の増加を示唆しています。サステナビリティを考慮した商品開発や、国内外のサプライチェーン最適化が今後の課題となるでしょう。
これらの視点を踏まえ、市場動向を注視しながら、消費者ニーズの変化に柔軟に対応していくことが、飲料・アルコール業界の持続的な成長には不可欠です。