こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は国際物流の構造とそれを支えている主要なプレイヤーについて解説していきます。この記事をご覧いただくことにより、国際間の物の輸送がどのように行われているか、またどのような企業が関わっているかを知ることができます。
国際物流の構造を知る

国際物流の構造を「国際物流概念図」に則って紹介していきます。まずモノを海外に輸出する側を「荷送人」(Shipper:シッパー)と呼びます。荷送人は製造物を倉庫に保管し、在庫を持っておく場合が多いです。注文を受け次第、倉庫から製品をコンテナに積み込んでいきます。このコンテナに積み込む下の画像の様な作業を「バンニング」と呼びます。

バンニングが完了すると船に積むためにコンテナヤードまで運ぶ必要があります。コンテナを陸上で輸送することを「ドレージ輸送」と言い、トラクタヘッドに繋がれるシャーシにコンテナを乗せて輸送します。

ドレージ輸送されたコンテナはコンテナヤード(CY)に運ばれます。コンテナヤードは輸出入が行われる中身の入ったコンテナの引き渡しや受け入れが行われる場所で、輸出の際に実際に船に船積されるまで保管されます。また、コンテナヤードは保税地域として税関当局の管理下に置かれており、この後の通関手続きに繋がっていきます。

輸出を行う際には輸出通関手続きを行う必要があります。輸出通関では主にどんなものが、どれだけの量、いくらの金額で、どこへ向かうのかということを申告し、税関長の輸出許可を得るという手続きになります。この手続きを輸出入業者に代わって税関とやりとりを行う通関業者を介して輸出入を行う場合もあります。
輸出通関で許可が得られれば、荷役となりコンテナは船舶に積み込まれます。大型の外航船は世界の主要なハブ港を定期船として回り続けています。ハブ港から各地域の港にもまたコンテナの定期船が運航されており、荷物は積み替えられる形で目的地に向かっていきます。更に国内の地方港に向かう場合は内航船(フィーダー船)に更に積み替えられて各地方毎へコンテナが運ばれていきます。

通常は船足は長くなりますがコストの安い船でのコンテナ輸送が良く利用されますが、今すぐに荷物が欲しい場合や、欠品を避けたい場合は航空機を活用した輸送も行われます。航空機での輸送はコンテナ船輸送と比較するとコストは高いですが、その分数日で世界各地へ到着できるというメリットがあります。
目的の港に到着すると、後は輸出と同じような流れで輸入側も手続きがあります。荷役後、輸入通関を通り、許可が降りればコンテナヤードで保管され、コンテナのままドレージ輸送されたりデバンニングされて荷物が個別に輸送されていきます。
ここまで多くの手順を踏んで行われてきた国際物流ですが、それらの手配を全てイチ事業者で行うのはかなりの労力を伴います。それを代わりに目的地までの各種手配を行なってくれるのが「フレイトフォワーダー」です。陸上・海上・航空等様々な手配を代行してくれます。
以下は各領域における主要なプレイヤーとなります。
フレイトフォワーダー
海外フォワーダー企業ランキング(取扱年間海上貨物量順)
- 海外フォワーダー
- Kuehne + Nagel(キューネ・アンド・ナーゲル)
- 年間海上貨物取扱量: 約 4.5~4.7百万TEU 程度
- スイスに本社を置くグローバルフォワーダー。海上貨物の最大手とされる。
- DHL Global Forwarding / DHL Supply Chain
- 年間海上貨物取扱量: 約 3.0~3.2百万TEU 程度
- ドイツポストDHLグループの物流部門。陸・海・空全てを網羅する世界最大級の物流企業の一つ。
- DB Schenker(ドイチェ・バーン・シェンカー)
- 年間海上貨物取扱量: 約 2.0~2.2百万TEU 程度
- ドイツ国鉄(DB)の物流子会社。鉄道に起源があるが、陸運・海運に拡大。
- DSV(ディーエスヴィー)
- 年間海上貨物取扱量: 約 2.0~2.2百万TEU 程度
- デンマークを拠点とする大手フォワーダー。近年M&Aを積極的に展開し、取扱量が急拡大している。
- Expeditors(エクスペディターズ)
- 年間海上貨物取扱量: 約 1.2~1.3百万TEU 程度
- アメリカ・シアトルに本社を置くフォワーダー。テクノロジーを活用した管理システムで定評があり、航空貨物も強い。海外フォワーダーランキング(取扱年間海上貨物量)
- Kuehne + Nagel(キューネ・アンド・ナーゲル)
国内フォワーダー企業ランキング(取扱年間海上貨物量順)
- 国内フォワーダー
- 日本通運(Nippon Express)
- 年間海上貨物取扱量: おおむね 100万TEU~150万TEU前後
- 国内外の陸・海・空を総合的に取り扱う日本最大手企業。2022年にNX Holdingsが設立され持ち株会社制に移行した。
- 郵船ロジスティクス(Yusen Logistics)
- 年間海上貨物取扱量: おおむね 180万~200万TEU前後
- 親会社が海運大手・日本郵船(NYK)である強みもあり、海上貨物では日系トップクラス。
- 近鉄エクスプレス(Kintetsu World Express)
- 年間海上貨物取扱量: おおむね 50万~70万TEU前後
- 航空貨物でのイメージが強いが、近年は海上フォワーディングにも注力して規模を伸ばしている。
- 阪急阪神エクスプレス(Hankyu Hanshin Express)
- 年間海上貨物取扱量: おおむね 20万~30万TEU前後
- 阪急阪神ホールディングス傘下。主にアジア地域の海上・航空輸送を柱に、拡大を続けている。
- 日新(Nissin Corporation)
- 年間海上貨物取扱量: おおむね 10万~15万TEU前後
- 航空・海上・陸上輸送を幅広く展開する総合物流企業。欧米・アジアへのフォワーディングを中心に事業拡大を図っている。
- 日本通運(Nippon Express)
倉庫
国内倉庫企業ランキング(年間売上高順)
- 国内倉庫会社
- 三井倉庫ホールディングス
- 売上高(直近年度):2024年3月期 連結ベースで約2,600億円
- 特徴:三井グループの一員として、国内外で総合物流サービスを提供。倉庫業を中心に、国際・国内輸送や不動産事業など多角的に展開している。
- 三菱倉庫
- 売上高(直近年度):2024年3月期 連結ベースで約2,500億円
- 特徴:三菱グループの中核企業として、倉庫業を基盤に港湾運送や国際輸送、不動産事業を展開。全国主要港湾に拠点を持ち、総合物流サービスを提供している。
- 住友倉庫
- 売上高(直近年度):2024年3月期 連結ベースで約1,800億円
- 特徴:住友グループの一員として、倉庫業を中心に海上・航空運送や不動産事業を展開。国内外に広がるネットワークを活かし、多様な物流ニーズに対応している。
- 澁澤倉庫
- 売上高(直近年度):2024年3月期 連結ベースで約734億円
- 特徴:澁澤栄一が創業した歴史ある企業で、倉庫業を中心に陸上運送や国際輸送、不動産事業を展開。多様な貨物の取扱いや新規業務の開始により、業績を拡大している。
- 安田倉庫
- 売上高(直近年度):2024年3月期 連結ベースで約674億円
- 特徴:芙蓉グループの一員として、倉庫業を中心に物流事業や不動産事業を展開。新規取引の開始や既存顧客の取引拡大、倉庫・輸配送ネットワークの拡充などにより成長を続けている。
- 三井倉庫ホールディングス
外航海運
海外外航海運企業ランキング(取扱年間海上貨物量順)
- 海外外航海運
- MSC(Mediterranean Shipping Company)
- 保有船隊容量: 約 480万~490万TEU 前後
- 本社はスイス(ジュネーヴ)。近年の大規模な新造船発注や中古船買収により、急速に船隊を拡充して世界最大規模となった。
- Maersk(A.P. Møller – Maersk)
- 保有船隊容量: 約 420万TEU 前後
- デンマークに本拠を置く世界的海運企業。長らく首位だったが、近年はMSCに抜かれ2位となる。総合物流へ注力する戦略で、フォワーディングや陸上輸送・倉庫事業にも積極投資している。
- CMA CGM
- 保有船隊容量: 約 380万TEU 前後
- フランス・マルセイユに本社を置く海運大手。近年は大型船の投入に加え、物流事業(CEVA Logistics買収など)にも力を入れている。
- COSCO Shipping Lines(含む OOCL)
- 保有船隊容量: 約 320万TEU 前後
- 中国国有の海運グループ。2018年にOOCL(香港)を買収して規模を拡大。アジア域内だけでなく欧米路線も大きい。
- Hapag-Lloyd
- 保有船隊容量: 約 180万~190万TEU 前後
- ドイツ・ハンブルクに本社を置く欧州大手。UASC(中東系海運)との統合などを経て船隊を拡充。堅実な収益体質で知られる。
- MSC(Mediterranean Shipping Company)
国内外航海運企業ランキング(年間売上高順)
- 国内外航海運
- 日本郵船株式会社(NYK Line)
- 売上高(連結):2兆3,872億円(2024年3月期 実績)
- 三大海運会社の一角。コンテナ船、ドライバルク、エネルギー輸送(LNG船・VLCC等)、自動車船など幅広い船隊を保有。
- 株式会社商船三井(Mitsui O.S.K. Lines, MOL)
- 売上高(連結):1兆6,279億円(2024年3月期 実績)
- 三大海運会社の一角。LNG船・石炭船などエネルギー輸送が大きな柱であり、海洋開発事業や豪華客船事業も手がける。
- 川崎汽船株式会社(“K” Line)
- 売上高(連結):9,623億円(2024年3月期 実績)
- 三大海運会社の一角。自動車船やドライバルク(鉄鉱石・石炭)輸送、LNG船などを主力事業とする。
- NSユナイテッド海運株式会社(NS United Kaiun Kaisha)
- 売上高(連結):約2,331億円(2024年3月期 実績)
- 日本製鉄(旧・新日本製鐵)やJFEスチール向けの鉄鉱石・石炭・鉄鋼製品輸送などを中心としたドライバルク海運が主体。
- 飯野海運株式会社(Iino Kaiun Kaisha)
- 売上高(連結):約1,380億円(2024年3月期 実績)
- 東京に本社を置く独立系の海運会社。主にエネルギー輸送(タンカー・LPG船)や化学品輸送、ドライバルク船などを運航。不動産事業や船舶管理事業も展開しており、多角的な経営が特徴。
- 日本郵船株式会社(NYK Line)
港湾ターミナル運営
国際ターミナル運営事業者ランキング(取扱年間海上貨物量順)
- 海外ターミナル運営
- PSA International
- 取扱いコンテナ量:6,260万 TEU(2023年実績)
- 概要:シンガポールを本拠地とする世界最大級のコンテナターミナルオペレーター。アジア、ヨーロッパ、南北アメリカなどに幅広いネットワークを持ち、最新の自動化技術を活用した港湾運営に強みを持つ。
- China Merchants Ports
- 取扱いコンテナ量:5,500万 TEU(2023年実績)
- 概要:中国の国有企業「招商局集団(China Merchants Group)」の傘下で、中国国内および海外の主要港湾のターミナル運営を行う。特に「一帯一路」構想に基づく港湾投資を積極的に展開している。
- COSCO Shipping Ports
- 取扱いコンテナ量:5,380万 TEU(2023年実績)
- 概要:中国の大手海運会社「中国遠洋海運集団(COSCO Shipping)」の港湾運営部門。中国国内に加え、ギリシャのピレウス港やスペインのバレンシア港など、海外の重要な港湾にも投資・運営を行っている。
- APM Terminals
- 取扱いコンテナ量:4,890万 TEU(2023年実績)
- 概要:デンマークの海運大手「A.P.モラー・マースク(A.P. Moller-Maersk)」傘下のコンテナターミナルオペレーター。世界各地で港湾事業を展開し、マースクグループの物流ネットワークと連携している。
- DP World
- 取扱いコンテナ量:4,430万 TEU(2023年実績)
- 概要:ドバイを拠点とする総合港湾運営会社で、中東・アフリカ・ヨーロッパ・アジアなどで事業を展開。ドバイのジュベル・アリ港を筆頭に、物流・フリーゾーン開発などの関連事業にも注力している。
- PSA International