6位 HS28類 無機化学品及び貴金属、希土類金属、放射性元素又は同位元素の無機又は有機の化合物
- 2013年 輸入金額:6,000億円
- 2023年 輸入金額:1兆3,434億円
- 輸入金額10年成長率:124%
6位は28類の無機化学品が6,000億円から1兆3,434億円と大幅なジャンプアップを果たしています。無機化学品も多くの品目から成り立つものですが、ある特定の品目が大きく成長しています。それが以下の3品目です。
- HS282520:酸化リチウム及び水酸化リチウム
- HS283691:リチウムの炭酸塩
- HS2853:りん化物、液体空気及び圧搾空気、アマルガム(貴金属のアマルガムを除く。上記の 28.43 参照)
製造業の発展している日本においては、電池需要の拡大と共にリチウムも加速度的に需要と輸入金額が拡大しているのが頷けますが、10年間で2桁も輸入金額が伸びるのは、大きな転換と言っても良いのではないでしょうか。また、HS2853についても、昨今の半導体需要の急拡大によって、日本国内の半導体製造装置産業からの引き合いが増えているのが、輸入金額急拡大の背景と推測されます。
上記のNewsPicksの動画では、リチウムアメリカの工場へ潜入し、白いゴールドと呼ばれる炭酸リチウムの作成過程を取材しています。(炭酸リチウムをGM(や電池メーカー)に売ると言っていますね。)
7位 HS30類 医療用品
- 2013年 輸入金額:2兆326億円
- 2023年 輸入金額:4兆3,141億円
- 輸入金額10年成長率:112%
7位は医療用品です。医療用品は2013年においても輸入金額2兆円を越す、代表的な品目ではありましたが、それでも10年で2倍にまで膨れ上がっています。これは皆さんもご想像いただける通り、コロナウイルスの影響によるものです。
30類における代表的な品目は以下の2つです。
- 3002:人血、治療用、予防用又は診断用に調製した動物の血、免疫血清その他の血液分画物及び免疫産品(変性したものであるかないか又は生物工学的方法により得たものであるかないかを問わない。)、ワクチン、毒素、培養微生物(酵母を除く。)その他これらに類する物品並びに細胞培養物(変性したものであるかないかを問わない。)
- 3004:医薬品(混合し又は混合してない物品から成る治療用又は予防用のもので、投与量にしたもの(経皮投与剤の形状にしたものを含む。)又は小売用の形状若しくは包装にしたものに限るものとし、第30.02項、第30.05項又は第30.06項の物品を除く。)
元々は3004の医薬品が安定的に輸入金額として成長していましたが、2020年を境にして、ワクチンを含む3002の品目輸入金額が急増しました。現在はコロナウイルスが5類感染症に移行したことで、2023年の輸入金額は2022年と比較して減少しています。
8位 HS93類 武器及び銃砲弾並びにこれらの部分品及び附属品
- 2013年 輸入金額:162億円
- 2023年 輸入金額:331億円
- 輸入金額10年成長率:105%
8位は武器の輸入です。国際情勢が緊迫しつつある昨今において、武器の輸入金額も10年前との比較で約2倍になっています。増加を牽引しているのは、
- HS9306爆弾、手りゆう弾、魚雷、機雷、ミサイルその他これらに類する物品及びこれらの部分品並びに弾薬筒その他の銃砲弾及び発射体並びにこれらの部分品(散弾及びカートリッジワッドを含む。)
- HS9305第93.01項から第93.04項までの物品の部分品及び附属品
の2品目で、93類全体の輸入金額で見てもこの2品目でおよそ9割を占めています。
9位 HS38類 各種の化学工業生産品
- 2013年 輸入金額:5,234億円
- 2023年 輸入金額:1兆56億円
- 輸入金額10年成長率:92.1%
9位は38類の各種化学工業生産品です。この中にも複数の品目が含まれており、特に金額の増加が顕著なものを取り上げると以下の3つになります。
- HS381800 元素を電子工業用にドープ処理したもの(円盤状、ウエハー状その他これらに類する形状にしたものに限る。)及び化合物を電子工業用にドープ処理したもの
- HS381512 活性物質として貴金属又はその化合物を使用したもの
- HS381700 混合アルキルベンゼン及び混合アルキルナフタレン(第27.07項又は第29.02項のものを除く。)
それぞれ、触媒や溶剤等、工業生産活動に欠かせない役割を持つものとなっています。
10位 HS86類 鉄道用又は軌道用の機関車及び車両並びにこれらの部分品、鉄道又は軌道の線路用装備品及びその部分品並びに機械式交通信号用機器(電気機械式のものを含む。)
- 2013年 輸入金額:234億円
- 2023年 輸入金額:442億円
- 輸入金額10年成長率:89.0%
10位は86類の中でも、輸出入に欠かせない「コンテナ」の輸入金額が大きく伸びたという結果になりました。港湾におけるコンテナ取り扱い個数は全世界で、2010年の約5.4億TEUから2020年には約8億TEUと1.5倍程増加しており、市場の広がりを感じます。ECの拡大もあり、日本でも10年間でより海外との貿易が活発になっているという実態を示しているでしょう。
まとめ
ここまで本の品目別輸入金額成長率TOP10を見てきましたが、その分類を眺めてみると成長著しい輸入の分類に、5/10が製造業に関連し、日本の強みを垣間見る結果となりました。
- 第6部:化学工業(類似の工業を含む。)の生産品(6位28類,7位30類,9位38類)
- 第15部:卑金属及びその製品(2位75類,3位79類)
また、
- 4位01類 動物(生きているものに限る。)
- 7位30類 医療用品
については、コロナ禍の影響によって大きく金額が伸びた領域と言えるでしょう。
このように輸出入を紐解くことによって、今の国の状態や市場環境をより詳しく知ることができます。
是非皆さんも日常生活の中で輸出入動向を意識することで、市場の変化や新たなビジネス機会を模索して見てください。