こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は鉄鋼産業の国際貿易データから輸出入の傾向を解説します。この記事をご覧いただくことにより、鉄鋼産業の国際的な動向の変化を知ることができます。

鉄鋼産業における傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。

  • 世界の鉄鋼に関わる製品[第72類:鉄鋼]の貿易取引金額(輸入金額)は、2004年のおよそ28.8兆円から、2023年ではおよそ68.3兆円と20年間で2.37倍に成長しています。
  • 2023年で輸出金額の最も大きい国は中国でおよそ9.7兆円です。その後ドイツ、日本が続いています。
  • 2023年で輸入金額の最も大きい国は中国でおよそ5.2兆円です。その後アメリカ、ドイツが続いています。
第72類鉄鋼の国際貿易統計概要
第72類鉄鋼の国際貿易統計概要

※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。

※世界の貿易金額の参考地として「輸入金額」をベンチマークしています。これは国内に到着した商品の記録として、正確性が比較的高いと判断するためです。一方で輸入金額はCIF価格ベースで報告されるため、商品自体の価値に加え、輸送費や保険を含めた金額であることに留意くしてください。

※上記のすべての情報は、あくまで参考として善意で提供されており、データや情報が将来にわたって正確であるという保証はありません。情報を利用する際には、ユーザー自身の判断と責任でご利用ください。

米国関税で影響のあるアルミニウムや鉄鋼製品については以下もご覧ください。

世界の輸入金額傾向

世界の鉄鋼の輸入金額20年推移
世界の鉄鋼の輸入金額20年推移

鉄鋼産業に関わる製品[第72類:鉄鋼]は、2023年の輸入金額ではおよそ68.3兆円となっており、HSコードの上2桁[類]の97類中、[第10位]の金額となっています。

また、[第72類:鉄鋼]の輸入金額は、2004年のおよそ28.8兆円から、2023年では68.3兆円と20年間で2.37倍に成長しており、成長率は97類中[第73位]となっています。

主要な輸出国と輸出金額の傾向

鉄鋼の輸出金額上位5カ国の輸出金額推移
鉄鋼の輸出金額上位5カ国の輸出金額推移

2023年における輸出金額は1位が中国でおよそ9.7兆円です。続いて2位ドイツがおよそ4.6兆円3位日本が4.3兆円4位インドネシアが3.7兆円5位韓国が3.6兆円となっています。

中国は国内で鉄鉱石も産出され発展による国内需要の伸びもあり、鉄鋼生産が盛んな国ではありましたが、2020年の新型コロナウイルスの影響で国内需要が減少すると、余剰生産分を輸出で海外に回すという動きが加速し、輸出金額が一気に増加しました。

日本はトヨタのお膝元であることもあり、軽くて強いハイテン鋼という高付加価値な鉄鋼で自動車向けに輸出金額を高めています。

また、インドネシアは2015年頃を境に輸出金額が大きく立ち上がってきました。これはインドネシアが世界有数のニッケル生産国であることから、ニッケルがステンレス鋼の製造に不可欠な材料であり、中国企業がインドネシアに製鉄所を建設して中国むけのステンレス鋼の生産を促進させたためです。

2023年における鉄鋼の国別輸出シェア
2023年における鉄鋼の国別輸出シェア

2023年の輸出金額における各国のシェアです。トップ5の国々に加え、ベルギー、アメリカ、イタリアを加えて世界の輸出金額の50%を占めています。

主要な輸入国と輸入金額の傾向

鉄鋼の輸入金額上位5カ国の輸入金額推移
鉄鋼の輸入金額上位5カ国の輸入金額推移

2023年における輸入金額は1位が中国でおよそ5.2兆円です。続いて2位アメリカがおよそ4.6兆円3位ドイツが4.5兆円4位イタリアが3.6兆円5位トルコが3.4兆円となっています。

鉄鋼の主な用途は「自動車製造」、「建設」、「造船」となっており、これらの産業や市場が強い国々が輸入を牽引しています。中国はこれら3つの製造及び国内需要も強いことと、国内で取れる鉄鉱石の品質が高くないこともあり、鉄鉱石もそうですが、鉄鋼製品についても一定の輸入金額規模があります。

アメリカにおいては特に建設の需要地であることで、鉄鋼輸入が盛んであり、ドイツは自動車生産が盛んであるため、輸入金額が大きくなっています。

2023年における鉄鋼の国別輸入シェア
2023年における鉄鋼の国別輸入シェア

2023年の輸入金額における各国のシェアです。トップ5の国々に加えてメキシコ、インド、韓国等、11カ国を含めて世界の輸入金額の50%を占めています。鉄鋼は産業の米と呼ばれており、どの国でも発展のためには必要とされる素材で需要地を問いません。

地図で見る二国間の輸出入動向

鉄鋼の中でも流通金額の大きい圧延鉄鋼についてRESOURCE TRADE.EARTHの2022年の貿易データを見ていきます。

Rolled iron&steel_圧延鉄鋼_resourcetrade_2022
引用:RESOURCE TRADE.EARTHより2022年圧延鉄鋼の輸出入動向 https://resourcetrade.earth/(2025年2月10日参照 )

圧延鉄鋼の二国間における2022年輸出入の金額TOP5は以下の通りです。

  1. カナダからアメリカ $5.7bn
  2. アメリカからメキシコ $4.6bn
  3. 中国から韓国 $4.5bn
  4. 中国からベトナム $4.4bn
  5. ベルギーからドイツ $4.1bn

二国間の貿易においては米国を中心としたカナダ、メキシコとの貿易と、中国を中心としたアジア各国への輸出が盛んに行われています。鉄鋼のような重量のあるものはコストの関係で長距離の輸送には向かないため、生産地から近隣の国々への流通がメインになります。なお、中国からアメリカへの輸出金額は$528mとなっています。

参考:第72類に含まれる項目一覧(HSコード)

7201:銑鉄及びスピーゲル(なまこ形、ブロックその他の一次形状のものに限る。)
7202:フェロアロイ
7203:鉄鉱石を直接還元して得た鉄鋼その他の海綿状の鉄鋼及び重量比による純度が99.94%以上の鉄(ランプ、ペレットその他これらに類する形状のものに限る。)
7204:鉄鋼のくず及び鉄鋼の再溶解用のインゴット
7205:銑鉄、スピーゲル又は鉄鋼の粒及び粉
7206:鉄又は非合金鋼のインゴットその他の一次形状のもの(第72.03項の鉄を除く。)
7207:鉄又は非合金鋼の半製品
7208:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(熱間圧延をしたもので幅が600ミリメートル以上のものに限るものとし、クラッドし、めつきし又は被覆したものを除く。)
7209:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(冷間圧延をしたもので、幅が600ミリメートル以上のものに限るものとし、クラッドし、めつきし又は被覆したものを除く。)
7210:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(クラッドし、めつきし又は被覆したもので、幅が600ミリメートル以上のものに限る。)
7211:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル未満のものに限るものとし、クラッドし、めつきし又は被覆したものを除く。)
7212:鉄又は非合金鋼のフラットロール製品(クラッドし、めつきし又は被覆したもので、幅が600ミリメートル未満のものに限る。)
7213:鉄又は非合金鋼の棒(熱間圧延をしたもので不規則に巻いたものに限る。)
7214:鉄又は非合金鋼のその他の棒(鍛造、熱間圧延、熱間引抜き又は熱間押出しをしたものに限るものとし、更に加工したものを除く。ただし、圧延後ねじつたものを含む。)
7215:鉄又は非合金鋼のその他の棒
7216:鉄又は非合金鋼の形鋼
7217:鉄又は非合金鋼の線
7218:ステンレス鋼のインゴットその他の一次形状のもの及び半製品
7219:ステンレス鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル以上のものに限る。)
722:ステンレス鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル未満のものに限る。)
7221:ステンレス鋼の棒(熱間圧延をしたもので不規則に巻いたものに限る。)
7222:ステンレス鋼のその他の棒及び形鋼
7223:ステンレス鋼の線
7224:その他の合金鋼のインゴットその他の一次形状のもの及び半製品
7225:その他の合金鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル以上のものに限る。)
7226:その他の合金鋼のフラットロール製品(幅が600ミリメートル未満のものに限る。)
7227:その他の合金鋼の棒(熱間圧延をしたもので不規則に巻いたものに限る。)
7228:その他の合金鋼のその他の棒、その他の合金鋼の形鋼及び合金鋼又は非合金鋼の中空ドリル棒
7229:その他の合金鋼の線