海運上場7社それぞれの特徴を比較

日本郵船

事業セグメント

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

日本郵船の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
ライナー&ロジスティクス(定期船)外航貨物海運業、船舶貸渡業、運送代理店業、コンテナターミナル業、港湾運送業、曳船業190,552
ライナー&ロジスティクス(航空運送)航空運送業188,731
ライナー&ロジスティクス(物流)倉庫業、貨物運送取扱業、沿海貨物海運業847,492
不定期専用船外航貨物海運業、船舶貸渡業、運送代理店業974,556
その他(不動産業)不動産の賃貸・管理・販売業4,207
その他(その他)客船事業、機械器具卸売業(船舶用)、その他運輸付帯サービス業、情報処理サービス業、石油製品の卸売業、その他170,405

上記を見ると、「ライナー&ロジスティクス(物流)」と不定期専用船セグメントが売上ドライバーになっていることがわかります。つまりコンテナだけでなく、ドライバルクも市場活況で業績にポジティブなインパクトがあったということです。

他社とのセグメント区分の違いと特徴としては、ライナー&ロジスティクス事業の中に(航空運送)セグメントがあり、(物流)も8,000億円規模の売上高があることから、海運のみならず総合物流企業として他社にはない輸送網を構築していることが強みであると言えます。その他のセグメントでも不動産や客船事業、石油製品の卸売業という事業もあり、さながら総合商社のような手広さを誇っています。


企業の方向性

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

日本郵船の開示資料を見ていきましょう今年2022年が中期経営計画の最終年となっており、直に新たな中期経営計画が発表されるのではないかと思います。直近の決算説明会資料でもそのニュアンスに触れており、各事業の方向性が示されています。主力の輸送事業に加え、グリーン事業という概念に触れられていますね。

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その企業が向かう方向性は、結局のところ投資金額の大きい方向であるはずです。日本郵船は2022-2050年の28年間で4.8兆円の環境投資をすると発表しています。1年間当たりに割り返すとおよそ1,700億円規模の投資で、規模感としてはそこまで思い切った投資ではないように見えます。日本郵船らしい堅実なマネジメントなのではないでしょうか。(対比するのはどうかと思いますが、パナソニックがSCM大手のブルーヨンダー社を買収した金額はその一件で8,600億円と言われており、バランスシート上でも一定のリスクを孕んだ、まさに社運をかけた買収でした。)

投資先は避けては通れない船舶のゼロエミッション化に2.1兆円、既存事業全体でみると3.6兆円の投資です。新規事業については、グリーンビジネスとその他新規成長事業に6,000億円ずつという配分になっています。


社員の評価

最近は非財務情報と言われていますが、特許や人材等、数字に換算しづらいようなアセットの情報も企業価値評価の参考にしていこうという流れが生まれつつあります。人材面でOpenworkの情報を見ながら企業の内情を見ていきたいと思います。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

日本郵船はいわゆるJTC、日本の伝統的な大企業と呼ばれるような企業風土で、仕事の進め方が重視され、手堅く保守的な風土と評する方が多い印象です。一方でおよそ3年でジョブローテーションがあり、企業の人数も比較的少ないということで、風通しがよく、意見の言いやすさ、雰囲気の良さをあげる方も多数いました。会社としてはゼネラリストを育成していく方向性のようです。

給与は年功序列で40歳程度まではほぼ横並びになっているものの、給与水準は高いため満足度は高そうです。一方突出した成果を出しても、それが反映されづらいという評価もあります。

陸上職では有休も取りやすくワークライフバランスが取りやすいという評価があります。フレックスで保育園のお迎えも行きやすいという声もありますね。一方で船の運航という業務上、休日や深夜対応が必要になってしまうこともままあるようです。また海外勤務もあるため転勤が頻繁に発生するのもグローバル企業らしい特色になります。海上職は勤務性質上、長期勤務、長期休暇というリズムになるようです。乗船業務があるのは海運企業ならではの働き方ではないでしょうか。

商船三井

事業セグメント

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

商船三井の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
ドライバルクドライバルク船を保有、運航360,913
製品輸送(コンテナ船)コンテナ船の保有、運航、コンテナターミナルの運営277,346
関連不動産事業、客船事業、曳船業、商社事業等108,103
その他(セグメント外)船舶運航業、船舶管理業、貸船業及び金融業等24,293
エネルギー・海洋油送船、LNG船等の不定期専用船を保有、運航303,165
製品輸送(自動車船・フェリー・内航RORO船)自動車専用船を保有、運航。フェリーを運航し、旅客並びに貨物輸送を実施。239,352

商船三井は最新の決算からセグメント区分を変更し、今回エネルギー輸送というセグメント名が新たにエネルギー・海洋セグメントとなっています。LNG船の業績に加えて、商船三井が唯一参入しているFSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)やFPSO(浮体式生産貯蔵積出設備)がこのセグメントに含まれているため、これが含まれていることを強調したセグメント名に変更したようです。既に3,000億円以上の規模感があるのですね。

商船三井の各セグメントはそれぞれ一定規模感を誇っています。とは言え、その大半は海運事業であるため、現在の好況化では良いものの、再び不況が襲ってきた場合は一気に業績が落ち込む可能性も否めません。


企業の方向性

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続いて、商船三井の方向性を見ていきましょう。商船三井は2022年に入り、不動産を手がけるダイビルと港湾運営の宇徳へのTOB(株式公開買い付け)を成立させました。非海運事業への投資を本格化させポートフォリオの多角化へ本格的に舵を切り出しています。

また、インド事業への投資も面白い独特の動きになります。このインド事業への投資についても、輸送にとどまらない大型案件の創出ということが意図としてあるようです。なかなか簡単にはいかないと思いますが、チャレンジなくして新たな事業は立ち上がりませんので応援したいと思います。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

商船三井の投資方針についても見ていきましょう。商船三井は2022-2024年の3年間で総額1兆円の投資を行うと発表しています。単年に割り返すと3,000億円強になり、日本郵船と比較すると積極的な投資姿勢が見て取れます。1兆円の内7,300億円が新規投資ということで、ポートフォリオ多角化の意向がここでも色濃く発揮されています。

商船三井は日本の海運会社としては先駆け的にコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を立ち上げており、スタートアップへの投資も加速しています。企業風土としても非常にアグレッシブにチャレンジし、それを許容する会社であると言えるのではないでしょうか。

以下の記事では海外船社も含めたスタートアップ投資の動向について触れていますのでご覧ください。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

商船三井のポートフォリオ戦略としては、2021年度の非海運事業実績約140億円から、15年後の2035年度に600-800億円規模の事業レベルまで引き上げていく方針です。もちろん海運事業も成長する可能性はありますが、海運は市場規模が何倍も拡大するほどの成長産業ではないため、非海運事業が5倍以上の規模感になれば、自ずとパーセンテージも上がってくるはずです。しかし、15年で今の総売上高の10%にも満たないわけですから、新規事業は一筋縄ではいかないと言えるでしょう。


社員の評価

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商船三井も日本郵船と同様に保守的で日本企業らしい文化であるという評価は同様であるものの、近年は人事制度の改革でフラット化が進み、管理職への早期登用に向けた取り組みも出てき始めているようです。若手に一定の裁量権を与える文化があるという声や大きな案件を任せてもらえる風潮にあるという声もあります。

商船三井も有給休暇が取りやすく、育児休暇が男女問わずに取れるというバランスの取りやすい環境のようです。日本郵船同様船の運航に関わる急遽の対応が必要な場面も報告されています。

商船三井の特徴として、他社では取りきれない細かなニーズをサービスとして提供したり、多角化してリスク分散を図っているという展開をしている一方で、少数精鋭であるため業務量が増えてきているという評価をしている声もありました。

川崎汽船

事業セグメント

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

川崎汽船の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
ドライバルクドライバルク事業276,496
エネルギー資源油槽船事業、電力炭船事業、液化天然ガス輸送船事業及び海洋資源開発事業89,738
製品物流自動車船事業、物流事業、近海・内航事業及びコンテナ船事業393,699
その他(セグメント外)船舶管理、旅行代理店及び不動産賃貸・管理業等61,505

川崎汽船はドライバルクセグメントと製品物流セグメントが主要な売上高を構成しており、海上輸送が事業構成の大半を占めています。川崎汽船は今のところ非海運事業を拡大強化していくような方向性は打ち出しておらず、現状事業セグメントの中でうまく資源配分を行なっていくポートフォリオマネジメントを志向しています。


企業の方向性

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

そのポートフォリオの組み方が上記の通り中期経営計画に示されています。成長事業としては鉄鋼原料・自動車船・LNG輸送船を対象とし、それ以外4つの領域を定義していますが、投資/コスト圧縮の程度や違いがいまいちわかりづらい気がします。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

足元の動きからより理解をしていきましょう。まずノンコア事業の売却ですがおそらくこれは、物流管理システムを提供するCDS社のファンドへの売却と、米国での貨物保管と配送を担うULS社の固定資産売却がこれに当たるのではと思います。海運事業以外から資産の売却をしており、他方、不採算事業/不採算船から撤退することで傷口を小さく抑えています。こういった収益構造の安定化だけでなく、昨年大きな話題となった川崎近海汽船の完全子会社化、洋上風力領域への進出や脱炭素化への投資等、市場が好況であるこのタイミングで構造改革を行なっています。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

川崎汽船の投資方針です。川崎汽船は2022-2026年の5年間で約5,200億円の投資を行うと発表しています。1年当たりおよそ1,000億円の投資であり、およそ60%が環境投資に割り振られ、使い道としては代替燃料船舶となります。売上高比で考えると、単年度だけでみれば、日本郵船と同水準かそれ以上の投資規模であると言えそうです。


社員の評価

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

前述の2社と比較するとやや社員の士気のポイントが低くなってしまっているのが気になりますが、投稿をみると、どうしても日本郵船・商船三井との比較の中で、強みを見出し切れていないところに課題感が見え隠れしています。業界三番手のポジショニングの難しさはあるのかもしれません。

また、川崎汽船も和気藹々としていて風通しもよくオープンな会社である評価が多いですが、女性の登用は始まったばかりでまだまだ男社会であるという評価もありました。

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