こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回はオーストラリアの主要産業をデータから解説していきます。この記事をご覧いただくことにより、産業としての強みや財の貿易で稼ぐ力が見えてきます。
オーストラリアの貿易収支の傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。
- オーストラリアの産業は鉱業・採石業が発達して付加価値を生み出しており、特色のある産業になっています。
- オーストラリアの企業で時価総額TOP10には複数の鉱物企業がランクインしており、その大きな投資を支えるように金融企業も複数ランクインしています。
- オーストラリアの収支で黒字となっている項目は第26類鉱石、スラグ及び灰が14.6兆円と黒字幅では最大であり、また、第27類鉱物製燃料が11.8兆円の黒字になっています。
※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。
オーストラリアの基礎情報
基礎情報の項目はすべて『ワールドファクトブック2024』ワシントンD.C.:中央情報局、2024年の情報に基づいています。
人口
合計: 26,768,598
男性: 13,305,110
女性: 13,463,488人 (2024年推定)
気候
一般的に乾燥から半乾燥。南部と東部は温帯、北部は熱帯
天然資源
アルミナ、石炭、鉄鉱石、銅、リチウム、スズ、金、銀、ウラン、ニッケル、タングステン、希土類元素、ミネラルサンド、鉛、亜鉛、ダイヤモンド、オパール、天然ガス、石油
注 1:オーストラリアは世界最大の石炭純輸出国であり、2021年には世界の石炭輸出の26.5%を占めています。石炭は同国の最も豊富なエネルギー資源であり、収益の点でオーストラリアからの第2位の輸出品目です。2020年、オーストラリアは米国とロシアに次いで世界第3位の回収可能な石炭埋蔵量を保有していました
注 2:オーストラリアは圧倒的に世界最大のオパール供給国です
注 3:オーストラリアは世界最大のウラン埋蔵量を保有しており、2020年にはカザフスタンに次ぐ世界第2位のウラン生産国でした
注 4:オーストラリアは2020年に世界最大のLNG輸出国でした
実質GDP(購買力平価)
1 兆 5,840 億ドル (2023 年推定)
1 兆 5,370 億ドル (2022 年推定)
1 兆 4,750 億ドル (2021 年推定)
農産物
小麦、サトウキビ、大麦、牛乳、菜種、綿花、モロコシ、牛肉、オート麦、鶏肉(2022年)
注:トン数に基づく上位10の農産物
産業
鉱業、産業および輸送機器、食品加工、化学薬品、鉄鋼
輸出入パートナー
輸出
中国 29%、日本 19%、韓国 10%、インド 7%、台湾 6% (2022) 注:輸出シェアに基づく上位5カ国の輸出相手国
輸入
中国 28%、米国 10%、韓国 6%、日本 6%、シンガポール 5% (2022) 注:輸入シェアに基づく上位5カ国の輸入相手国
港
港湾総数: 66 (2024)
大規模: 5
中規模: 8
小規模: 24
非常に小規模: 29
石油ターミナルのある港湾: 38
主要港湾:ブリスベン、ダンピア、ダーウィン、フリーマントル、ジーロング、ホバート、メルボルン、ニューカッスル、ポートアデレード、ポートダルリンプル、ポートケンブラ、ポートリンカーン、シドニー
オーストラリアの産業が生み出す付加価値
上の二つの図は過去から現在までにおけるオーストラリアの産業別付加価値の推移と2022年における産業別付加価値の比率を示したものになります。
オーストラリアの生み出す付加価値は2000年以後大きく伸長しています。1993年のおよそ2,900億ドルから2023年には1.62兆ドルと5倍以上に成長しました。
2022年における産業別付加価値の比率を見ると、以下の順で付加価値を生み出しています。
22.0% B,C,D,E:鉱業・採石業、製造業、電気・ガス・空調供給、水道・下水処理・廃棄物管理
18.1% O,P,Q:公務及び国防・義務的社会保障事業・教育・保健衛生及び社会事業
15.8% G,H,I:卸売・小売業並びに修理業・運輸・保管業・宿泊・飲食サービス業
11.3% L:不動産業
11.1% M:専門・科学・技術サービス業
7.4% K:金融・保険業
7.1% F:建設業
2.5% A:農業・林業及び漁業
2.4% S:その他のサービス業
2.2% J:情報通信業
大きく区分すると一次産業は2.5%、鉱業・採石業を含む二次産業(建設業含む)は約30%とイメージにあるこの2つの産業は付加価値全体の3割強であり、7割はサービス業を中心とした構成になっていることが分かります。
続いて各産業別付加価値比率の経年推移と直近数年間の変化率を見ていきます。
ここ30年間程は大きな産業構造の変化は起きていないように見えます。そんな中でも、B,C,D,E:鉱業・採石業、製造業、電気・ガス・空調供給、水道・下水処理・廃棄物管理の二次産業は長年オーストラリア産業の軸として最も大きな割合を維持しており、成長分野で言えばM:専門・科学・技術サービス業が徐々に比率を上げつつあります。
直近5年間の変化率では、各産業共に数%~10%の継続的な成長が続いており、特に2020~2021年は A:農業・林業及び漁業の成長が顕著でした。また、全体の中での最も比率は低いものの J:情報通信業も10%程成長しています。
オーストラリア企業の時価総額ランキング
オーストラリア企業の時価総額ランキングを見ていきます。時価総額のTOP10には金融セクターの企業が5社、鉱物企業が3社含まれており、特に産業としての色が強い鉱物企業には世界3大資源メジャーとして数えられるBHPがオーストラリア時価総額ランキングの2位に入っています。
オーストラリアは地理的な特徴から品質の良い鉱物資源が豊富に採掘できるため、資源メジャーのような世界的にも影響力の大きな企業が立ち上がっています。そういった大型投資が必要な産業が発達しているため、金融企業もランキングに多く名を連ねています。
3大資源メジャーについては以下の記事に詳細が記載されているのでご覧ください。
オーストラリアの貿易収支の傾向
オーストラリアの財の貿易収支はこの20年間で黒字の傾向が拡大するトレンドになっています。
2023年の貿易収支はおよそプラス13.3兆円(輸出およそ52.0兆円、輸入およそ38.7兆円)で資源産出国の特性を活かし貿易黒字となっています。
オーストラリアの2023年貿易収支黒字TOP5
2023年のデータにおいて、オーストラリアで最も黒字金額が大きいのは[第26類:鉱石、スラグ及び灰]でおよそ14.6兆円の黒字です。オーストラリアには資源メジャーとして名を馳せるBHPが拠点を構えているため、品質の良い鉄鉱石の産出と輸出が金額としても突出しています。
2位は[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ11.8兆円の黒字です。オーストラリアは世界最大の石炭純輸出国であり、2021年には世界の石炭輸出の26.5%を占めていることや、2020年に世界最大のLNG輸出国だったこともあり黒字幅が大きくなっています。
3位は[第25類:塩、硫黄、土石類、プラスター、石灰及びセメント]でおよそ1.8兆円の黒字です。この中では、HS2530他の項に該当しない鉱物としてバーミキュライトやトルマリン、バライトといった鉱物がその大半を占めます。
オーストラリアの2023年貿易収支黒字比率
貿易収支黒字の比率を見ると、[第26類:鉱石、スラグ及び灰]と[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]で黒字品目の70%弱を占めています。この2つの品目が豪州の主要な産業と呼べるでしょう。
オーストラリアの輸出金額の傾向
オーストラリアの2023年輸出金額TOP5
2023年のデータにおいて、オーストラリアで最も輸出金額が大きいのは石炭を中心とした[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ17.6兆円です。
2位は[第26類:鉱石、スラグ及び灰]でおよそ33兆円の輸出です。特にHS2601鉄鉱石12.8兆円、HS2603銅鉱石6,300億円が主要な項目です。
3位は[第71類:天然又は養殖の真珠、貴石、半貴石、貴金属]でおよそ3.0兆円の輸出です。特にHS7108ゴールド2.6兆円が主要な項目です。
オーストラリアの2023年輸出金額比率
輸出金額の比率を見ると、収支黒字と同様に[第26類:鉱石、スラグ及び灰]と[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]で62.1%とその大半を占めていることが分かります。
オーストラリアの輸入金額の傾向
オーストラリアの2023年輸入金額TOP5
2023年のデータにおいて、オーストラリアで最も輸入金額が大きいのは[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部品]でおよそ6.1兆円です。特にHS8703自動車3.4兆円、HS8708自動車部品1.6兆円が主要な項目です。
2位は[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ5.8兆円の輸入です。特にHS2710石油製品4.8兆円、HS2709原油7,300億円が主要な項目です。
3位は[第84類:原子炉、ボイラー及び機械類]でおよそ5.4兆円の輸入です。特にHS8471パーソナルコンピュータ9,800億円が主要な項目です。
オーストラリアの2023年輸入金額比率
輸入金額の比率を見ると、[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]、[第85類:電気機器]で輸入金額の約50%以上を占めています。