こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は中国の貿易収支傾向とそこから見る主要産業を紹介します。この記事をご覧いただくことにより、産業としての強みや財の貿易で稼ぐ力が見えてきます。
中国の貿易収支の傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。
- 中国の収支は2023年で+116兆円で大幅な黒字となっており、20年間右肩上がりのトレンドを形成してきました。
- 中国の収支で黒字となっている項目は第85類:電気機器が49兆円と黒字幅では最大。また第84類:機械類も44兆円の黒字と続き、この2品目だけで93兆円ほどの黒字を作っています。
- 輸入も第85類:電気機器と第27類:鉱物製燃料および鉱物油がそれぞれ70兆円台と大きい金額になっていますが、それを超える圧倒的な輸出の金額の大きさが中国の強みです。
※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。
※本記事で取り扱っているのはモノの貿易の側面のみとなります。本来的な国の経常収支ではありませんのでその点もご了承ください。
中国の基礎情報
基礎情報の項目はすべて『ワールドファクトブック2024』ワシントンD.C.:中央情報局、2024年の情報に基づいています。
人口
合計: 1,416,043,270人
男性: 722,201,504人
女性: 693,841,766人 (2024年推定)
気候
非常に多様で、南は熱帯から北は亜北極まで分布する
天然資源
石炭、鉄鉱石、ヘリウム、石油、天然ガス、ヒ素、ビスマス、コバルト、カドミウム、フェロシリコン、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、リチウム、水銀、タンタル、テルル、スズ、チタン、タングステン、アンチモン、マンガン、マグネシウム、モリブデン、セレン、ストロンチウム、バナジウム、磁鉄鉱、アルミニウム、鉛、亜鉛、希土類元素、ウラン、水力発電の潜在能力(世界最大)、耕作地
実質GDP(購買力平価)
31 兆 2,270 億ドル (2023 年推定)
29 兆 6,830 億ドル (2022 年推定)
28 兆 8,220 億ドル (2021 年推定)
農産物
トウモロコシ、米、野菜、小麦、サトウキビ、ジャガイモ、キュウリ、トマト、スイカ、豚肉(2022年)
注:トン数に基づく上位10の農産物
産業
工業生産高総額の世界的リーダー。鉱業および鉱石処理、鉄鋼、アルミニウム、その他の金属、石炭、機械製造、兵器、繊維および衣服、石油、セメント、化学薬品、肥料、消費者製品(履物、玩具、電子機器を含む)、食品加工、自動車、鉄道車両、機関車、船舶、航空機を含む輸送機器、通信機器、商用宇宙打ち上げ機、衛星
輸出入パートナー
輸出
米国15%、香港7%、日本5%、ドイツ4%、韓国4%(2022) 注:輸出シェアに基づく上位5カ国の輸出相手国
輸入
米国7%、韓国7%、日本6%、オーストラリア6%、中国6%(2022) 注:輸入シェアに基づく上位5カ国の輸入相手国
港
合計港数: 66 (2024)
大規模: 5
中規模: 9
小規模: 25
非常に小規模: 27
石油ターミナルのある港: 48
主要港:潮州、大連、芳城、広州、漢口、龍水ターミナル、青島港、秦皇島、上海、蛇口、天津新港、威海、温州、厦門
中国の貿易収支の傾向
中国の財の貿易収支はこの20年間で黒字拡大の傾向が続いています。2009年と2016年に3年程度のダウントレンドに入っていますが、それぞれリーマンショック、チャイナショックの時期と重なります。
2023年の貿易収支はおよそプラス116兆円(輸出およそ475兆円、輸入およそ359兆円)で世界で最も貿易黒字の大きな国となっています。
中国の2023年貿易収支黒字TOP5
2023年のデータにおいて、中国で最も黒字金額が大きいのは[第85類:電気機器]でおよそ49兆円の黒字、2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ44兆円の黒字です。中国は20年程前、繊維等軽工業から発展が開始し、現在では高付加価値製品が製造できるようになったことで、収支も右肩上がりになっています。
第85類ではHS8517スマートフォン等携帯通信機器28兆円の黒字、第85類の次点はHS8507電気式蓄電池(バッテリー)9兆円の黒字でした。第84類の中で最も収支に貢献しているのは、HS8471PC等が約16兆円で第84類の中で次点のHS8415エアコン3兆円と比較しても、10兆円以上大きな黒字を作っています。
3位は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ17兆円の黒字、4位は[第94類:家具、寝具、マットレス]でおよそ17兆円の黒字、5位は[第73類:鉄鋼製品]でおよそ12兆円の黒字となっています。
中国の2023年貿易収支黒字比率
貿易収支黒字の比率を見ると、[第85類:電気機器]と[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]で黒字品目のおよそ34%、前項目で出たTOP5でおよそ50%(137兆円)を占めています。
中国の輸出金額の傾向
中国の2023年輸出金額TOP5
2023年のデータにおいて、中国で最も輸出金額が大きいのは[第85類:電気機器]でおよそ126兆円です。特にHS8517通信機器(スマホ等含む)30.8兆円、HS8542集積回路19.1兆円が主要な項目です。
2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ72兆円の輸出です。特にHS8471パーソナルコンピュータ21兆円が主要な項目です。3位は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ27兆円の輸出となっています。
中国の2023年輸出金額比率
輸出金額の比率を見ると、[第85類:電気機器]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]で輸出金額の40%以上(200兆円弱)を占めています。これが収支黒字の中にも直結しており、世界の工場としての需要の高さが垣間見える数字の規模となっています。
輸出の最大の相手はアメリカになりますが、昨今の貿易摩擦で徐々にアメリカの比率は徐々に下がり始めています。それに対して中国は一帯一路構想で輸出先を西に拡大しようとしています。中国の地政学的特徴と一帯一路構想については、以下の記事をご覧ください。
中国の輸入金額の傾向
中国の2023年輸入金額TOP5
2023年のデータにおいて、中国で最も輸入金額が大きいのは[第85類:電気機器]でおよそ77兆円です。特にHS8542集積回路49兆円が主要な項目です。
2位は[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ72兆円の輸入です。やはり中国の膨大な人口を支えるために多額の輸入が必要になります。
3位は[第26類:鉱石、スラグ及び灰]でおよそ33兆円の輸入です。特にHS2601鉄鉱石19兆円、HS2603銅鉱石8.5兆円が主要な項目です。中国は鉄鋼産業が強く、また銅も工業需要から輸入金額が年々増加しています。
中国の2023年輸入金額比率
輸入金額の比率を見ると、[第85類:電気機器]、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]、[第26類:鉱石、スラグ及び灰]、で輸入金額の約50%以上を占めています。特に鉱物性燃料や鉱石がおよそ30%となっており、原料比率が大きいことが中国国内や輸出の市場の大きさを示しています。