こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回はハンガリーの貿易収支傾向とそこから見る主要産業を紹介します。この記事をご覧いただくことにより、産業としての強みや財の貿易で稼ぐ力が見えてきます。
ハンガリーの貿易収支の傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。
- ハンガリーの収支は2023年でプラス1.3兆円の黒字となっており、20年間の大きなトレンドとしては概ね黒字を推移しています。
- ハンガリーの収支で黒字となっている項目は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]の自動車産業が1.8兆円と黒字幅では最大。その後[第85類:電気機器]でおよそ1.3兆円が続いています。
- 輸入は[第85類:電気機器]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]、[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]がTOP3となっており、それに次いで[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]がおよそ2.0兆円の輸入となっています。

※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。
※本記事で取り扱っているのはモノの貿易の側面のみとなります。本来的な国の経常収支ではありませんのでその点もご了承ください。
ハンガリーの基礎情報
基礎情報の項目はすべて『ワールドファクトブック2024』ワシントンD.C.:中央情報局、2024年の情報に基づいています。


人口
合計: 9,855,745人
男性: 4,812,668人
女性: 5,043,077人 (2024年推定)
気候
温暖、冬は寒く曇り、湿気が多い、夏は暖かい
天然資源
ボーキサイト、石炭、天然ガス、肥沃な土壌、耕作地
実質GDP(購買力平価)
3,889 億 600 万ドル (2023 年推定)
3,924 億 6,800 万ドル (2022 年推定)
3,752 億 6,800 万ドル (2021 年推定)
農産物
小麦、トウモロコシ、牛乳、大麦、ヒマワリの種、菜種、テンサイ、豚肉、ブドウ、リンゴ(2022年)
注:トン数に基づく上位10の農産物
産業
鉱業、冶金、建設資材、加工食品、繊維、化学薬品(特に医薬品)、自動車
輸出入パートナー
輸出
ドイツ 24%、イタリア 6%、ルーマニア 5%、スロバキア 5%、オーストリア 4% (2022) 注:輸出シェアに基づく上位5カ国の輸出相手国
輸入
ドイツ21%、中国7%、オーストリア7%、スロバキア6%、ポーランド6%(2022年) 注:輸入シェアに基づく上位5カ国の輸入相手国

ハンガリーの貿易収支の傾向

ハンガリーの財の貿易収支はこの20年間で概ね黒字を推移しています。
2023年の貿易収支はおよそプラス1.3兆円(輸出およそ22.1兆円、輸入およそ20.9兆円)で黒字となっていますが、前年はウクライナ-ロシア戦争の影響もあり、ロシアからの天然ガスの輸入金額が前年の4倍ほどに膨れ上がったため単年度ではありますが赤字となっています。
ハンガリーの2023年貿易収支黒字TOP5

2023年のデータにおいて、ハンガリーで最も黒字金額が大きいのは[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ1.8兆円の黒字です。ハンガリーは1990年頃より西欧諸国と比較して安価な労働コストや、ドイツへのアクセスが容易なことから、トヨタやスズキといった自動車メーカーが相次いで進出したことが、自動車産業発展の背景にあります。
2位は[第85類:電気機器]でおよそ1.3兆円の黒字です。詳細を見ると、HS8507電気式蓄電池(バッテリー)が1.2兆円と突出した黒字を生み出しています。これも上記の自動車産業の文脈であり、ハンガリーではGSユアサと韓国のSK InnovationがそれぞれEV用のリチウムイオン電池工場を建設する等、EV産業が集積し、中国のEVメーカーの進出も盛んになっています。背景にはハンガリー政府による積極的なEV産業誘致と補助金や税制優遇があるためです。(出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)
ハンガリーの2023年貿易収支黒字比率

貿易収支黒字の比率を見ると、[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]と[第85類:電気機器]で黒字品目の63%を占めています。ハンガリーのものづくりで対外的に稼ぎが大きいのは、「自動車」「バッテリー」で、この2つが黒字を牽引していると言えるでしょう。
ハンガリーの輸出金額の傾向
ハンガリーの2023年輸出金額TOP5

2023年のデータにおいて、ハンガリーで最も輸出金額が大きいのは[第85類:電気機器]でおよそ5.7兆円です。主にHS8507電気式蓄電池(バッテリー)1.58兆円、HS8517通信機器6,300億円です。
2位は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ3.9兆円の輸出です。特にHS8703自動車2.2兆円、HS8708自動車部品1.4兆円が主要な項目となっています。
3位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ3.2兆円の輸出です。特にHS8471コンピュータ6,700億円、HS8407ピストン式内燃エンジン5,200億円が主要な項目です。
ハンガリーの2023年輸出金額比率

輸出金額の比率を見ると[第85類:電気機器]、[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]で輸出金額の50%以上を占めています。その中でも先述の通り特定の品目で構成されていると言えるでしょう。
ハンガリーの輸入金額の傾向
ハンガリーの2023年輸入金額TOP5

2023年のデータにおいて、ハンガリーで最も輸入金額が大きいのは[第85類:電気機器]でおよそ4.4兆円です。内訳を見るとHS8517通信機器7,100億円、HS8542集積回路6,200億円が大きな比率を占めています。
2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ2.9兆円の輸入です。特にHS8471コンピュータ3,200億円、HS8409内燃機関の部分品2,900億円が主要な項目です。
3位は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ2.1兆円の輸入です。HS8708自動車部品1.1兆円、HS8703自動車5,600億円が主要な項目です。
その他[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ2.0兆円の輸入と続いています。
ハンガリーの2023年輸入金額比率

輸入金額の比率を見ると、[第85類:電気機器]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]、[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]、で輸入金額の約50%強を占めており、2023年においては鉱物製燃料の全体における比率はそこまで高くない状況となっています。