こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回は日本の貿易収支傾向とそこから見る主要産業を紹介します。この記事をご覧いただくことにより、産業としての強みや財の貿易で稼ぐ力が見えてきます。

日本の貿易収支の傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。

  • 日本の収支は2023年でマイナス9兆円の赤字となっており、20年間の大きなトレンドとしては赤字幅が拡大しています。
  • 日本の収支で黒字となっている項目は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]の自動車産業が18.6兆円と黒字幅では最大。その後[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ8.5兆円が続く。
  • その一方で赤字となっている要因は[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ27兆円を輸入している。また、[第85類:電気機器]もおよそ16兆円を輸入しており、電気機器の日本生産における付加価値は大きくない。

※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。

※本記事で取り扱っているのはモノの貿易の側面のみとなります。本来的な国の経常収支ではありませんのでその点もご了承ください。

日本の貿易収支の傾向

日本の財の貿易収支はこの20年間で赤字の傾向が拡大するトレンドになっています。

2023年の貿易収支はおよそマイナス9.3兆円(輸出およそ101兆円、輸入およそ110兆円)で2023年に初めて輸出が100兆円を超えたものの、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]の輸入金額が膨らみ、赤字幅は長期トレンドでは大きくなってきています。

2011年には東日本大震災が発生し、その後数年間は赤字が進みました。2013〜2014年にかけて米国のシェールオイル開発で石油がダブつき、石油価格が大幅に下落したことで2015年頃から収支が大きく回復しましたが、直近2年はロシアーウクライナ戦争により再び石油価格が高騰して収支が悪化しています。

日本の2023年貿易収支黒字TOP5

2023年のデータにおいて、日本で最も黒字金額が大きいのは[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ18.6兆円の黒字です。これはトヨタをはじめとする自動車産業が世界各国への輸出を牽引すると同時に、産業としての付加価値も自動車は高いこと示しています。

2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ8.5兆円の黒字です。詳細を見ると、HS8486半導体製造機械及び関連装置で3兆円弱、HS8429自走式土工機械(ブルドーザーやショベルカー等の建機)で2兆円弱の黒字を作り出していました。

一方で、[第85類:電気機器]はこの後出てくる輸出・輸入共に金額面でランクインをしていますが、日本における収支は赤字となっており、国際的な競争の激化と共に、日本における電気機器の付加価値が弱まっている現状を示しています。

日本の2023年貿易収支黒字比率

貿易収支黒字の比率を見ると、[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品][第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]で黒字品目の59%を占めています。日本のものづくりで対外的に稼ぎが大きいのは、「自動車」「半導体製造装置」「建機」の3つであると言えるでしょう。

日本の輸出金額の傾向

日本の2023年輸出金額TOP5

2023年のデータにおいて、日本で最も輸出金額が大きいのは[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ22兆円です。主にHS8703自動車15.5兆円HS8708自動車部品3.8兆円でこの金額を構成しています。

2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ18兆円の輸出です。特にHS8486半導体製造装置3.5兆円HS8429建設用機械1.9兆円が主要な項目となっています。

3位は[第85類:電気機器]でおよそ14兆円の輸出です。特にHS8542集積回路4.3兆円HS8541半導体デバイス1.1兆円が主要な項目です。

日本の2023年輸出金額比率

輸出金額の比率を見ると[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品][第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類][第85類:電気機器]で輸出金額の50%以上を占めています。

それ以外でも[第90類:光学機器、精密機器および医療用機器][第72類:鉄鋼][第39類:プラスチック及びその製品]が上位に入ってきており、これらむ自動車産業の一部に含まれる製品群が輸出を構成していると言えるでしょう。

日本の輸入金額の傾向

日本の2023年輸入金額TOP5

2023年のデータにおいて、日本で最も輸入金額が大きいのは[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ27兆円です。内訳を見るとHS2709原油がおよそ11兆円HS2711液化天然ガス等がおよそ7.4兆円HS2701石炭がおよそ5.9兆円という構成になっています。日本は世界でのも有数のLNG供給網を構築しているため、比率が大きくなっています。

2位は[第85類:電気機器]でおよそ16兆円の輸入です。特に特にHS8542集積回路4.0兆円HS8517 通信機器(スマホ含む)3.7兆円が主要な項目です。

3位は[第84類:機械類]でおよそ9.7兆円の輸入です。HS8471パーソナルコンピュータ2.1兆円HS8411ジェットエンジン等1.1兆円が主要な項目です。

その他[第30類:医療用品]でおよそ4.3兆円の輸入[第90類:光学機器、精密機器および医療用機器]でおよそ4.0兆円の輸入と続いています。

日本の2023年輸入金額比率

輸入金額の比率を見ると、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油][第85類:電気機器][第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]、で輸入金額の約50%弱を占めており、日本における市場規模の大きさを表しています。中でも[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]単体で全輸入金額のおよそ25%を占めており、金額的に負担が大きいことが貿易赤字の原因になっていることが見て取れます。