こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回はオランダの貿易収支傾向とそこから見る主要産業を紹介します。この記事をご覧いただくことにより、産業としての強みや財の貿易で稼ぐ力が見えてきます。
オランダの貿易収支の傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。
- オランダの収支は2023年でプラス10.8兆円と黒字になっており、直近20年間のトレンドとしても右肩上がりとなっています。
- オランダの収支で黒字となっている項目は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]がおよそ3.7兆円と黒字幅では最大。その他、[第06類:生きている樹木その他植物]のおよそ1.4兆円、[第90類:光学機器、精密機器および医療用機器]の1.3兆円と続いています。
- オランダの特徴は輸出入共に金額の1位が[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]となっており、ヨーロッパ市場の玄関口としてユーロポート(ロッテルダム港)に原油が集まり、ライン川やドナウ川を通じて石油製品がヨーロッパ中に輸出されるという構造があります。
※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。
※本記事で取り扱っているのはモノの貿易の側面のみとなります。本来的な国の経常収支ではありませんのでその点もご了承ください。
オランダの貿易収支の傾向
オランダの財の貿易収支はこの20年間で赤字の傾向が拡大するトレンドになっています。
2023年の貿易収支はおよそプラス10.8兆円(輸出およそ104兆円、輸入およそ93兆円)で収支が黒字となっています。人口がそれほど多くないオランダは世界の輸出金額ランキングでも4位に入るほど貿易が盛んな国ですが、その背景は地理的な要因があります。
オランダは輸出入ともに[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]が第一位となっています。これはオランダが産油国という訳ではなく、2022年頃まではロシアからの、2023年以降はアメリカからの原油をヨーロッパ中に流通させる窓口として機能しているためです。
上記写真のユーロポートは原油を輸入し、またその周辺には石油製品を生産するためのプラントが結集しています。また、ロッテルダムからは、ライン側ーマイン川ードナウ川と国際河川がつながっており、日本では馴染みの少ない船を使った河川輸送が盛んで、石油製品がヨーロッパ各国へ流通してきます。
こういった地理的な背景もあり、オランダは世界有数の貿易国となっています。
オランダの2023年貿易収支黒字TOP5
2023年のデータにおいて、オランダで最も黒字金額が大きいのは[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ3.7兆円の黒字です。特にHS8486半導体製造機械及び関連装置がおよそ2.4兆円と牽引しています。
2位は[第06類:生きている樹木その他植物]でおよそ1.4兆円の黒字です。特にHS0602植物がおよそ6,000億円、HS0603切花がおよそ5,300億円の黒字を作っています。伝統的に花卉産業が発達しているだけでなく、機械化が進み生産性が高く高付加価値な植物輸出で1兆円以上の黒字を作っています。
3位は[第90類:光学機器、精密機器および医療用機器]でおよそ1.3兆円の黒字です。中でもHS9021義肢、義足、資格補助具、ペースメーカーなどの矯正器具及び補助器具が4,700億円の黒字と特徴的な産業が発達しています。
オランダの2023年貿易収支黒字比率
貿易収支黒字の比率を見ると、5,000億円以上(およそ全体の4%)の収支をもつ分類が8分類あり、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]の比率が高いものの、様々な産業が発達した上で、10兆円もの貿易黒字を作っているというバラエティに富んだ構成になっています。「半導体」、「植物や花」、「義肢・義足」といった他国ではあまり登場しない品目が並んでいるのも特徴的であると言えるでしょう。
オランダの輸出金額の傾向
オランダの2023年輸出金額TOP5
2023年のデータにおいて、オランダで最も輸出金額が大きいのは[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ18兆円です。特にHS2710石油製品およそ11兆円が全ての製品の中でダントツの輸出額を誇っています。
2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ14兆円の輸出です。特にHS8486半導体製造装置3.4兆円、HS8471パーソナルコンピュータ2.2兆円が主要な項目です。半導体関連ではASMLという著名な企業があり、EUV露光装置を世界で初めて開発した企業として知られています。
3位は[第85類:電気機器]でおよそ9兆円の輸出です。特にHS8517 通信機器(スマホ含む)3.0兆円、HS8517通信機器(スマホ等含む)5.2兆円が主要な項目です。
オランダの2023年輸出金額比率
輸出金額の比率を見ると、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]、[第85類:電気機器]、[第90類:光学機器、精密機器および医療用機器]、[第30類:医療用品]で輸出金額の50%以上を占めています。
オランダの輸入金額の傾向
オランダの2023年輸入金額TOP5
2023年のデータにおいて、オランダで最も輸入金額が大きいのは[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ20兆円です。特にHS2709原油およそ7.7兆円、HS2710石油製品およそ4.5兆円、HS2711液化天然ガス等がおよそ3.6兆円が輸入金額TOP3を占めています。
2位は[第85類:電気機器]でおよそ10兆円の輸入です。特にHS8517 通信機器(スマホ含む)3.4兆円、が主要な項目です。
3位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ10兆円の輸入です。特にHS8471パーソナルコンピュータ2.3兆円、HS8486半導体製造装置1.0兆円が主要な項目です。
オランダの2023年輸入金額比率
輸入金額の比率を見ると、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]、[第85類:電気機器]、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]、[第90類:光学機器、精密機器および医療用機器]、で輸入金額の約50%以上を占めています。輸出と構成がほぼ変わらないのも特徴的です。