こんにちは、国際貿易動向を伝えるメディアLanesです。(Xはこちら)今回はアメリカの貿易収支傾向とそこから見る主要産業を紹介します。この記事をご覧いただくことにより、産業としての強みや財の貿易で稼ぐ力が見えてきます。

アメリカの貿易収支の傾向と主要な産業をまとめると以下の通りです。

  • アメリカの収支は2023年でマイナス162兆円でかなり大きな赤字となっており、2008年を境に、赤字幅はどんどん大きくなってきています。
  • アメリカの収支で黒字となっている項目は第88類航空機および宇宙飛行体が13兆円と黒字幅では最大。また、米国も産油国なので、第27類鉱物製燃料が8兆円弱の黒字に。
  • 赤字の要因は第85類電気機器と第84類機械類がそれぞれ64兆円台と合わせて130兆円近くにまで輸入金額が膨らんでいる。

※本来はドルベースでの比較が良いと思いますが、今回は分かりやすいように日本円に変換しているため、時系列データは為替の影響を含むものになっています。数字の増加や減少傾向はそちらを考慮の上捉えていただければと思います。

※本記事で取り扱っているのはモノの貿易の側面のみとなります。本来的な国の経常収支ではありませんのでその点もご了承ください。

アメリカの貿易収支の傾向

アメリカの財の貿易収支はこの20年間で赤字の傾向が拡大するトレンドになっています。

2023年の貿易収支はおよそマイナス162兆円(輸出およそ283兆円、輸入およそ445兆円)で世界で最も貿易赤字の大きな国となっています。

アメリカの2023年貿易収支黒字TOP5

2023年のデータにおいて、アメリカで最も黒字金額が大きいのは[第88類:航空機および宇宙飛行体]でおよそ13兆円の黒字です。これはアメリカはボーイングが本拠地を構えているため、輸出が強く、産業としては黒字が大きい項目です。

2位は[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ8兆円の黒字です。アメリカも産油国であるため、黒字幅が大きくなっています。

3位は[第12類:採油用の種及び果実]でおよそ4兆円の黒字です。中でもHS1201大豆が黒字を大きくしています。4位は[第10類:穀物]でおよそ3兆円の黒字HS1005とうもろこしHS1001小麦が牽引しています。

アメリカの2023年貿易収支黒字比率

貿易収支黒字の比率を見ると、[第88類:航空機および宇宙飛行体][第27類:鉱物製燃料および鉱物油]で黒字品目の50%以上を占めています。この2つの品目が米国の主要な産業と呼べるでしょう。

アメリカの輸出金額の傾向

アメリカの2023年輸出金額TOP5

2023年のデータにおいて、アメリカで最も輸出金額が大きいのは[第27類:鉱物製燃料および鉱物油]でおよそ45兆円です。アメリカは産油国として鉱物製燃料の輸出金額も世界有数となっています。

2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ33兆円の輸出です。特にHS8471パーソナルコンピュータ4.3兆円HS8486半導体製造装置2.8兆円が主要な項目です。

3位は[第85類:電気機器]でおよそ28兆円の輸出です。特にHS8542集積回路6.1兆円HS8517通信機器(スマホ等含む)5.2兆円が主要な項目です。

アメリカの2023年輸出金額比率

輸出金額の比率を見ると、[第27類:鉱物製燃料および鉱物油][第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類][第85類:電気機器][第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品][第88類:航空機及び宇宙飛行体]で輸出金額の50%以上を占めています。しかし収支黒字の中に、[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類][第85類:電気機器][第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]が含まれていなかったことから、これらの品目は輸入も多く、アメリカとして黒字を生み出すような特徴的な産業とまでは言えないでしょう。

アメリカの輸入金額の傾向

アメリカの2023年輸入金額TOP5

2023年のデータにおいて、アメリカで最も輸入金額が大きいのは[第85類:電気機器]でおよそ65兆円です。アメリカにおける消費の大きさや生産プロセスに必要な電気機器を輸入しています。特にHS8517通信機器(スマホ等含む)16兆円HS8542集積回路5兆円が主要な項目です。

2位は[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類]でおよそ64兆円の輸入です。特にHS8471パーソナルコンピュータ15兆円HS8473パーソナルコンピュータ用の部品4.5兆円が主要な項目です。

3位は[第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]でおよそ53兆円の輸入です。特にHS8703自動車29兆円HS8708自動車部品12兆円が主要な項目です。

アメリカの2023年輸入金額比率

輸入金額の比率を見ると、[第85類:電気機器][第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類][第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品][第27類:鉱物製燃料および鉱物油]で輸入金額の約50%以上を占めています。[第84類:原子炉、ボイラーおよび機械類][第85類:電気機器][第87類:鉄道用及び軌道用以外の車両並びにその部分品]は輸出金額のランキングにも含まれていましたが、このように輸入金額もかなり大きいことから、国内の産業規模は大きいものの付加価値が十分ではなく海外との競争が激しいため、収支としては赤字になってしまっています。