NSユナイテッド海運

事業セグメント

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

NSユナイテッド海運の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
外航海運撒積船による鉄鉱石・石炭・鉄鋼製品・非鉄鉱石等の輸送、タンカーによる原油・LPG等の輸送、及び船舶の貸渡し等の事業172,219
内航海運国内水域における撒積船による鉄鋼製品・石灰石・セメント等の輸送、タンカーによるLPG・LNG等の輸送、及び船舶の貸渡し等の事業23,728
その他(セグメント外)総務・経理業務受託業、情報サービス業等366

NSユナイテッド海運はセグメントの分け方が外航・内航・その他の3セグメントとなっています。主に外航海運が主力事業ですね。NSユナイテッド海運は純粋な海運企業と表現しても差し支えないでしょう。NSユナイテッド海運は元々日本製鐵海運部門の流れを汲む企業のため、鉄鋼石の輸送等ドライバルクに強みがあります。また、日本郵船が18%程度の株式を保有する関連会社という一面もあります。


企業の方向性

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

NSユナイテッドの中期経営計画は2020-2023年を対象期間とし、2030年のありたい姿に向けて方向性を示しています。やはり環境対応への取り組みが重要な位置付けになりそうです。直近決算説明会資料にも、「バイオマス燃料船」「風力を活用した硬帆船」「アンモニア燃料船」と様々なシナリオに対応した船舶の研究や試験運航着手について記載があります。この辺りは大手3社にも引けを取らない、全方位的な取り組みです。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

残念ながら具体的な投資の規模感については言及されていませんが、船隊更新、環境対応、DX化に対して投資財源を割いていくように見受けられます。NSユナイテッド海運の方向性として、事業を多角化していくとういう様子は見受けられませんでした。


社員の評価

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NSユナイテッド海運も昔ながらの企業風土でコンサバであるという評価になっていました。NSユナイテッド海運は船舶の管理運航が中心の事業ですが、国際法規によって業務は固められているため、変化を起こしづらいという声もありました。また、製鐵会社の関連企業として専用船運航で安定した収益があり、やや変化を生み出す機運が薄れてしまっているのではという評価も挙がっていました。

飯野海運

事業セグメント

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飯野海運の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
外航海運業全世界にわたる水域で原油、石油製品、石油化学製品、液化天然ガス、液化石油ガス、発電用石炭、肥料、木材チップ等の海上輸送82,546
内航・近海海運業国内、近海を中心とした水域で液化天然ガス、液化石油ガス、石油化学ガス等の海上輸送9,535
不動産業国内の賃貸オフィスビルの所有、運営、管理、メンテナンス及びフォトスタジオを中心とした不動産関連事業12,254

飯野海運も主力は外航海運業でありますが、セグメントの説明を見ると一言目に原油や石油製品の記載があります。飯野海運は原油や液化天然ガス等エネルギー資源、化学製品の輸送に実績が多く、必然的に中東発の物流量が多くなっているのが特徴と言えるでしょう。ウクライナ情勢もありエネルギー関連の商流変化の影響は注視しないといけません。また、不動産業セグメントが11.7%と一定の比率を有しているのが特徴です。都心部のビル賃貸が主な収益元のようです。


企業の方向性

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飯野海運の中期経営計画は2020-2023年を対象期間として、IINO VISION for 2030を実現するためのプロセスを示しています。安定収益基盤の盤石化、グローバル事業の推進、サステナビリティへの取り組みの3つが重点強化領域です。

具体的な取り組みではTCFD提言への賛同とシナリオ分析という一般的なものから、Plug and Playをパートナーにスタートアップ企業とのコラボレーションの加速といった、海運業界ではなかなか見られない特徴的な取り組みもあります。

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

飯野海運の投資方針は3ヵ年の営業キャッシュフロー550億円の内、450億円を事業投資に配分するという計画を出していました。事業投資の内訳は成長・安定・環境領域に1/3ずつとバランス配分しています。

足元2020年度と2021年度の営業キャッシュフローを見ると、合計350億円ということで200億円ビハインドしている状況です。それもあってか2021年度は投資キャッシュフローを抑えてバランスを取っているようにも見受けられます。

飯野海運の主力はケミカル関係なので、昨今の海運好況の背景にあるコンテナやバルクの追い風は受けづらかったのかもしれませんね。


社員の評価

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飯野海運については残念ながら社員による評価の投稿はありませんでした。

明治海運

事業セグメント

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明治海運の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
外航海運業船舶貸渡業を柱に、船舶管理業を加えた海運に係る事業を展開41,924
ホテル関連現在各所にてホテルおよびゴルフ場を所有し、それぞれのサービスを提供3,383
不動産賃貸業当社グループ所有のオフィスビルを中心とした不動産貸室業508

明治海運も外航海運業セグメントが9割を占めており、残り1割をホテル関連と不動産賃貸業が構成しています。船舶はケミカルタンカーの比重が多く、バルクキャリア、自動車船、コンテナキャリア等幅広く展開しているようです。ホテル事業については、明治海運の創業が神戸ということもあり神戸と、沖縄と北海道にそれぞれリゾート施設を所有しています。


企業の方向性

明治海運については、開示資料が有価証券報告書や決算短信等に限定されており、企業の方向性を窺い知るまでには至りませんでした。足元の状況から鑑みると国内のホテル関連事業はコロナの影響もあり利益を圧縮しているため、好調かつ環境対応が必要な海運事業に投資リソースを割くのではないでしょうか。


社員の評価

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

回答者が1名であったため、あまり傾向としては言及できませんが、保有している船舶が幅広く、不動産やホテルも所有しているため、リスク分散ができている、また大企業ではないため経営意思決定が早いという評価がありました。

乾汽船

事業セグメント

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乾汽船の直近年度の事業セグメントは以下のような構造になっています。

事業名取引商品・製品セグメント売上高 (百万円)
ロジスティクス(外航海運)船舶の自社運航による貨物輸送、船舶貸渡業29,001
ロジスティクス(倉庫・運送)倉庫、荷役、貨物運送4,075
不動産施設賃貸4,549

乾汽船の事業セグメント構造は、ロジスティクス(外航海運)が77%を占め、ロジスティクス(倉庫・運送)と不動産が残り22.9%を構成しています。海運不況の際は外航海運とその他のセグメントの売上比率が6:4程になった時期もありましたが、足元は海運事業の好調を背景に外航海運の売り上げ比重が大きく高まっています。そういう意味では乾汽船も海運好景気のメリットを享受した企業の一つです。船隊はハンディサイズのバルクキャリアが主力であり、2021年度の決算発表では輸送物資の約半分が木材であったと報告しています。

また、不動産は勝どきエリアを地盤とし、街づくりに関わっています。ちなみに、直近アクティビストファンドであるアルファレオホールディングスが29.99%まで乾汽船の株式を保有し、経営陣へ強い改善要求を求めていたということがニュースにもなっていましたが、この背景には勝どきエリアの不動産価値を評価し、経営改善で株価を高められる算段があったのではと言われています。2022年に入って断続的に保有比率を減らしており利益確定に動いているようですが、アルファレオホールディングスが株を購入し始めてから、現在は海運好況によりかなり株価も上昇しているため、結果的にファンドとしては成功を収めたといえるでしょう。


企業の方向性

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

乾汽船の中期経営計画によれば、「外航海運事業」「倉庫・運送事業」「不動産事業」それぞれにおける戦略をはっきりと示しています。今年度に限って言えば外航海運の売上比重が高くなっていますが、海運景気の波もあるため、それぞれのセグメントに対して資源配分を行なっていき、外航海運業に比重を置きすぎない経営方針なのではと捉えています。とはいえ、株主の目線で見ると、「倉庫・運送事業」「不動産事業」セグメントはここ何年も売上高の成長が見られていないため、あくまで業績を押し上げる可能性があるのは「外航海運事業」であると捉えている方も多いのではないでしょうか。


社員の評価

【2022年版】海運上場7社 企業の特徴を徹底比較

オーナー企業のため、社長の考え方やビジョンが色濃く反映されていること、また、その社長の考え方に合うかどうかが重要であるという評価が大半を占めました。従業員数も70名程ということもあり、社長との距離の近さも、こういった評価が増える一つの要因なのではないかと思います。また、小規模ならではの仕事の裁量権や結果による評価が明確である点も特徴として現れていました。

まとめ

今回は日本の海運企業上場7社について様々な角度から比較分析をしてきましたが、海運業界の構造や傾向、各社の特徴等が見えてきたのではないかと思います。

古くからグローバルに物を流通させるインフラとしてなくてはならない存在の海運企業ですが、各社とも歴史が長く、景気の波の影響を受けやすい市場の中でそれぞれの発展を遂げてきました。

これからも存在感を持ち続ける業界だけに、うまく業界特性を捉えながら関わっていきたいですね。私自身海運業のスケールの大きさと役割の重要さに魅了されて関わっている業界だけに、これからも記事を通しながら海運業界の魅力を伝えていきたいと思います。

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