Lanesでは世界各国の海運企業における環境関連の取り組みや投資の動向を整理してお伝えしています。今回は、日本郵船の近年の環境への取り組みを2022年1-3月期に配信されたプレスリリースの内容を整理してご紹介していきます。
日本郵船の事業・船舶・技術への投資
日本郵船における、事業・船舶・技術に関する投資のリリースは、以下の9件となります。
- 4回目となるバイオ燃料での試験航行に成功 2022年03月16日
- 国内初、完全自律船フレームワークの船級認証を取得 2022年03月15日
- エジソン社向けの新造LNG船が竣工 2022年03月04日
- アンモニアReady LNG燃料船のコンセプト設計完了 2022年03月03日
- メタノールを燃料とするケミカルタンカーが竣工 2022年01月27日
- 日本郵船と上野グループが資本業務提携 2022年01月27日
- 日本郵船とノルウェー・Knutsen Groupが 液化CO2輸送・貯留事業の新会社設立 2022年01月18日
- 新造LNG船の定期傭船契約を締結 2022年01月18日
- 4隻のLNG燃料ケープサイズバルカー建造発注を決定 2022年01月14日
日本郵船のリリースでは、アングロ・アメリカン社との協業によるバイオ燃料を使用した試験運航、株式会社MTI(日本郵船子会社)およびElomatic Oy(フィンランド)とのアンモニアReadyLNG燃料船の設計、メタノールを燃料とするケミカルタンカー(正確には重油も利用する二元燃料エンジン)の竣工、LNG燃料ケープサイズバルカーの建造発注と、複数のグリーンエネルギーに並行して投資を進めている様子が伺えます。
メタノールを燃料として利用できるケミカルタンカーは、先のMaerskの記事でも登場した、韓国の現代尾浦造船が建造を担当し、既に1月27日に竣工をしています。
LNG燃料のケープサイズバルカーは、日本シップヤードで2隻、名村造船で1隻、中国船舶集団傘下の上海外高橋造船で1隻の計4隻が発注され、2024年度から、2025年度にかけて順次竣工する予定です。
さらに、ノルウェーのKnutsen Group(クヌッツェン・グループ)とは、液化CO2の海上輸送・貯留事業に関する、新規事業開拓およびマーケティングを行うための合弁会社を50%ずつの出資比率で設立したとのことです。Knutsenが持つ技術を活かしながら、CCUSという世界でも注目されている市場で新たなビジネスを模索する動きとなります。
日本郵船と関係機関との連携
日本郵船における、関係機関との連携に関するリリースは、以下の2件となります。
OCTARVIAは実海域での船舶性能を正確に評価する方法の開発を目的としたプロジェクトで、2017年11月から2021年3月に実施されたフェーズ1から今回フェーズ2へと移行しています。20以上の機関が参画し、予算規模は2.6億円の規模感となります。(参考引用:フェーズ1のプロジェクト総括)従来より船のパフォーマンスの議論は重要な話題として挙がることが多いですが、今後は十分な船舶パフォーマンスを発揮し、さらに環境性も優れているということが求められる中で、このプロジェクトが担う意義もより大きくなっていくことが想定されます。
パワーエックスは洋上風力発電エネルギーを電気運搬船で輸送するプロジェクトや船舶・EV・グリッド用の電池の製造、販売事業を展開するスタートアップで、スタートトゥデイ(現ZOZO)でZOZOSUITの開発を担当した元役員が代表を務めることでも注目を集めています。パワーエックスは2021年末にも電気運搬船「Power ARK」の船級取得に向けて、DNVと意向表明書を締結したばかりであり、今回日本郵船という日本の海運業界でも最大手の企業と協業関係が生まれたことで、プロジェクトが前進することが期待されます。
まとめ
2022年1-3月期の日本郵船における環境関連のリリースを見てきましたが、今後可能性のあるグリーンエネルギーに対して、幅広く投資を進めている動きが見受けられました。どのエネルギーが主流となっていくかまだ見通しが立たない中で、大手の海運企業として全方位的に手を広げることは理にかなっているように思います。また事業ポートフォリオが多彩な日本郵船ならではのCCUS領域への新事業の模索や、注目スタートアップであるパワーエックスとの協業など、今後が楽しみな動きも散見される1-3月期のリリースでした。