今回は、ハパックロイドの近年の環境への取り組みを2022年1-3月期に配信されたプレスリリースの内容を整理してご紹介していきます。DALのコンテナライナー事業の買収、23,500TEU超の新造船を12隻発注しているなど、積極的な投資姿勢が伺えます。詳細を見ていきましょう!

ハパックロイドの事業・船舶・技術への投資

事業投資

DeutscheAfrika-Linien(DAL)のコンテナライナー事業を買収

ハパックロイドは2022年3月10日にドイツの航空会社DeutscheAfrika-Linien(DAL)のコンテナライナー事業を買収する枠組みに合意しました。DALの企業概要は以下の通りです。

1890年にまでさかのぼる歴史を持つDALは、コンテナ貨物の輸送のための確立された定期船会社であり、ヨーロッパ、南アフリカ、インド洋間で4つの定期船サービスを運営しています。ハンブルクに本社を置くアフリカの専門家は、ドイツと南アフリカにオフィスを構え、世界47か国にサードパーティの代理店を置いています。彼らのライナー事業(代理店を含む)は150人以上を雇用しています。DALは6,589TEUのコンテナ船を所有し、約17,800箱(所有およびリース)のコンテナ船隊を運営しており、買収の一環として引き継がれます。

ハパックロイドプレスリリースより

リリースにもありますが、ハパックロイドは昨年アフリカ専門の航空会社NileDutchを買収しており、西アフリカとの間でサービス強化がなされていると言います。2021年にケニア、モロッコ、セネガルに新しいオフィスを開設していることから、アフリカへの展開強化により拍車がかかっているようです。


船舶・技術投資

「最初の23,500以上のTEU船は、2023年に配備の準備が整います」–Lutz-MichaelDyckへのインタビュー

ハパックロイドの今後の船舶投資については、Strategic Asset Projectsのシニアディレクターである、Lutz-Michael Dyckがインタビューに答えています。

インタビューの主な要点は以下の通りです。

  • 2020年後半から2021年半ばにかけて、合計12隻の23,500TEU超の新造船を発注済み
  • 1番船は2023年4月30日に、12隻のうち最後の1隻は2024年12月31日に引渡し予定
  • ハパックロイドの新造船としては初めて、当初から従来の燃料油と液化天然ガス(LNG)の両方で運航可能なデュアルフューエル船として設計されている
  • 将来的には、CO2ニュートラルなSNGやバイオガスでの運航を増やしていきたいと考えている
  • 23,500TEU以上の船以外に3隻と2隻の未発注船があります。これらの船には、約13,000個のコンテナを積載できる予定です。デュアルフューエルエンジンは搭載しない予定です。その代わり、スクラバー(排ガス浄化装置)を搭載した最新鋭のフルコンテナ船5隻となり、韓国と中国で建造される予定です。韓国での1隻目の引渡しは2023年8月31日です。

12隻という多数の大型コンテナ船を既に発注済みであり、いずれも従来燃料とLNGの両方で運航可能なデュアルフューエル船とのこと。グローバルで現在の主流となっていますね。将来的にはバイオガス運航の方向性も示されています。また、これまでも複数の新造船リリースを追いかけてきていますが、やはり中韓の発注が大半ということもあり、技術力にも注目していきたいと思います。

ハパックロイドと関係機関との連携

海事脱炭素化グローバルセンターとハパックロイドがパートナーシップを結び、海運の脱炭素化アジェンダを推進

ハパックロイドからのリリースにはありませんが、Global Centre for Maritime Decarbonisation (GCMD ※直訳 海運脱炭素化グローバルセンター) とハパックロイドは、海上脱炭素化に貢献する取り組みに協力することを約束する戦略的パートナーシップ契約に署名したと、GCMDから2022年3月17日にリリースされました。

そもそも、このGCMDはシンガポール海事港湾庁(MPA)とBHP, BW, DNV Foundation, Eastern Pacific Shipping, Ocean Network Express, Sembcorp Marineの6社がの国際海事機関(IMO)の目標を達成するために、脱炭素化を支援する非営利団体としてシンガポールに設立されました。

今回ハパックロイドは欧州を拠点とする初めての主要なパートナーであり、ハパックロイドからは1,000万ドルの資金が追加投資されるということで、よりGCMDの取り組みが強化されます。

現在、GCMDで行われている研究は「アンモニアバンカリングの安全性」の1件となっていますので、当該研究や今後の見通しへの共感によって出資を意思決定したものと思われます。

まとめ

以上がハパックロイドの直近のリリース動向となります。ハパックロイドは2021年10-12月の第4四半期の業績が昨今のコンテナ需要の高まりによって、利益が4倍に増加したという報道もあり、好調な業績が積極投資を後押ししている背景も見受けられます。

その上で今回のリリースにもあったアフリカへの事業拡大によって売り上げ・収益を順調に拡大することができれば、技術的な投資についても今後まだまだ動きが出てきそうです。この世界第5位の海運企業の投資の方向性についても引き続きウォッチしていきます。